2004 Fiscal Year Annual Research Report
15世紀イタリア絵画における「結婚」と女性の「徳」の表象
Project/Area Number |
16652008
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
喜多村 明里 兵庫教育大学, 学校教育学部, 助教授 (90294264)
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Keywords | ルネサンス / 女性 / プロフィール肖像 / 結婚 / 家族 / 貞潔 / ドメニコ・ギルランダイオ / レオナルド・ダ・ヴィンチ |
Research Abstract |
15世紀イタリアにおける結婚儀礼とその記念品・祝宴の美術を中心に、関連する事例と現存作例をについて集成調査を進めた。なかでも、とくにフィレンツェ派の女性プロフィール肖像板絵の現存作例について、肖像人物の持具・服飾品に関する象徴的図像解釈をはかり、多くの女性プロフィール肖像に見られる豪華な盛装と宝飾品、窓枠あるいは蒼空という背景の設定が、花嫁が持参する嫁資財産や理想の妻の美徳とされた<貞潔>の勝利を暗示するものであること、女性の個性的な内面描写をはかるというよりはむしろ、彼女が所属する家族の財力と名誉をうたいあげるものであったことを解明している。ドメニコ・ギルランダイオ作《ジョヴァンナ・デッリ・トルナブオニ=アルビッツィ》肖像は、理想化された「妻」を描く典型的な作例であり、その銘文において肖像女性の「魂や諸徳を描き得ない」と明言している点で興味深い。なお、1470年代に初めて登場する女性の4分の3肖像について、レオナルド・ダ・ヴィンチ作《ジネヴラ・デ・ベンチ》の制作経緯を調査し、本作例が花嫁や妻の理想的肖像の類とは異なることを明らかにした。ベンチ家は人文学者と親交したほかレオナルドを厚遇した知的な富裕市民の家系であり、肖像女性ジネヴラ自身、詩作をもたしなんだ知的な教養ある女性であったことを考えると、レオナルドは彼女をすぐれた一個人として捉え、男性と同様の4分の3肖像で描くことに挑んだと考えられる。
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