2005 Fiscal Year Annual Research Report
15世紀イタリア絵画における「結婚」と女性の「徳」の表象
Project/Area Number |
16652008
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
喜多村 明里 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 助教授 (90294264)
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Keywords | ルネサンス / 女性 / 人文主義 / フェミニズム / 名婦人伝 / ボッカッチョ / レオナルド・ブルーニ / モデラータ・フォンテ |
Research Abstract |
ルネサンス期のイタリア社会における女性概念を歴史学および同時代文献の精読により調査した。フランチェスコ・バルバロ『妻の務めについて(De re uxoria)』(1415-16年頃)、レオン・バッティスタ・アルベルティ『家族論(I libri della famiglia)』(1430年代),ヴェスパシアーノ・ダ・ビスティッチ『女性の礼賛と称賛の書(II libro delle lodi e commendazione dell donne)』(1480年代初頭)その他、人文学者たちの女性に関する記述では、妻の務めとして「家政管理」と「子どもの養育」を挙げ、女性の「貞潔」の美徳のほか、夫あるいは家長に対する服従の美徳、沈黙を守り寡黙に夫を支えることが強調されており、15-16世紀の女性概念の基盤をなしていたことが分析できた。また、レオナルド・ブルーニが支配階層の女性に推奨した「文芸研究」とは、宗教書と古典の読書によって「聖徳と道徳哲学」を学ぶことを主眼とするものであり、政治的スキルとしての弁論術や修辞学は女性に推奨されなかったこと、数学や天文学といった自然科学的な分野からも女性が疎外されていたことが裏付けられる。その他多数の文献精読をすすめたが、14世紀後期から17世紀初頭にかけて刊行された名婦人伝・女性論関係の文献一覧を作成して考察した結果、全容としては、ボッカッチョ『名婦人伝(De mulieribus claris)』(1361-62年頃)を初めとしてルネサンスの人文主義は傑出した古代女性の範例を見いだし、このため15世紀後期から16世紀末にかけては、中世以来のミソジニー(女性嫌悪)あるいは女性蔑視の伝統と、女性の肯定礼賛論のあいだで論争が繰り返されていたことが明らかとなった。この成果については17年度イタリア学会全国大会にて研究発表「人文主義と近代初期フェミニズムの懐胎-モデラータ・フォンテ『女性の価値』(ヴェネツィア、1600年)を通じて」をおこなった(次年度に論文掲載の予定)。
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