2005 Fiscal Year Annual Research Report
実験的な音律の多様性に関する研究、ならびにその可能性を模索する創造と実践
Project/Area Number |
16652009
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤枝 守 九州大学, 大学院芸術工学研究院, 教授 (80346858)
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Keywords | 音律 / モノコード / 純正調 |
Research Abstract |
「音律」という音楽の重要な基盤に対して、これまでの歴史観を相対化しながら、実験的な方向を模索している本研究では、本年度において、海外の調査・研究をおもに行なった。とくに、アメリカ西海岸の作曲家や楽器製作家たちの実践に焦点を当てた調査が中心となった。 そのなかでも、西海岸、バークレーを拠点に活動を続ける作曲家/楽器製作家のエレン・フルマンの「Long String Instrument」が設置されたスタジオの訪問し、純正調に基づく弦振動の音響作用を最大限に取り入れた楽器システムの詳細な調査やフルマンのインタヴューを実施した。 また、同じ西海岸に拠点をおくテリー・ライリーの自宅を訪問し、あらたな音律に対する実験的な取り組みや作曲の方法などの意見を交換した。とくに、近年、ライリーが作曲したナショナル・ステール・ギターのために作品において、ルー・ハリソンが考案したといわれる純正調の音程システムによって、この楽器に生じるあらたな音響的なクオリティや、この楽器の今後の可能性など、ライリー自身の思考を知り得たことは大きな収穫となった。さらに、西海岸滞在中に、作曲家ポール・ドレッシャーが製作した倍音を取り出し、そこから純正音程を導く楽器システムの調査も行なった。 このようなアメリカ西海岸の作曲家たちの音律や楽器システムに関する最新の調査のほかに、バーリレーにおいて、当地で活動するピアニスト、サラ・ヘイヒルによる自作『植物文様ピアノ曲集」の公演が行なわれた。この公演では、ピアノに古典調律が施され、平均律では得られてない響きの多様性の可能性を探るというこの作品の意図が演奏によって紹介された。 本年度は、このようにアメリカの実状を調査しながら、あらたな情報の入手や研究のネットワークを広げることが目的であったが、今後は、これまでの成果を生かした実践/研究につなげていくことになる。
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