2004 Fiscal Year Annual Research Report
日本仏画における皆金色技法の成立と表現史に関する基礎的研究
Project/Area Number |
16652012
|
Research Institution | Kyoto National Museum |
Principal Investigator |
泉 武夫 独立行政法人国立博物館京都国立博物館, 学芸課, 研究室長 (40168274)
|
Keywords | 仏画 / 皆金色 / 截金文様 |
Research Abstract |
平安時代末期から鎌倉時代にかけての国内所在の仏画のうち、皆金色の成立に関係する作品を調査した。阿弥陀を本尊とする来迎図作品が主要部分を占めると考えられるため、その領域を中心に取り上げた。対象となった作品は、金戒光明寺蔵「山越阿弥陀図」、京都国立博物館蔵「山越阿弥陀図」、西来寺蔵「阿弥陀四尊来迎図」、清涼寺蔵「二河白道図」などである。また皆金色ではないが関連作品として、修理中の禅林寺蔵「山越阿弥陀図」、および石清水八幡宮蔵の「黒漆地金銀泥絵八角宝珠箱」も調査する機会に恵まれた。調査の方法は実作品に接し、拡大鏡による観察および、35ミリのカラー・スライド撮影を行った。拡大鏡による観察では、皆金色風の着衣文様が金泥なのか截金なのかを判断し、また地の部分が彩色なのか、あるいは金泥地なのかという点について特に注意した。 海外所在作品のうちでは、皆金色仏画の早い時期の成立と想定される重要な作品、シカゴ美術館蔵「阿弥陀三尊来迎図」等を調査した。精査した結果、このひとつの作品のなかで、截金文様を着衣に施す場合、地の部位を彩色地とするものと、金泥地とするものとの二種類を併用していることが観察された。皆金色の形成過程では、技法上の試行錯誤が行われているものと想定していたが、このように一つの作品の中で、用いる場所によって二つの技法を使い分ける例のあることが確認できた意味は大きい。 なお、撮影した35ミリカラー・スライドは可能な限りフォトCDに焼き付けて画像を保存した。
|