2005 Fiscal Year Annual Research Report
日本仏画における皆金色技法の成立と表現史に関する基礎的研究
Project/Area Number |
16652012
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Research Institution | Kyoto National Museum |
Principal Investigator |
泉 武夫 独立行政法人国立博物館京都国立博物館, 学芸課, 教育室長 (40168274)
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Keywords | 截金 / 仏画 / 金泥 / 仏身 / 鎌倉時代 |
Research Abstract |
本年度は、皆金色技法と関連のある金銀泥を用いた仏画等の重要作品の調査を行った。皆金色表現が確立する鎌倉時代の作品のうちから浄土教絵画を取り上げ、清涼寺ほかの阿弥陀浄土図関係作品および興聖寺蔵の兜率天曼茶羅図の精査を行い、仏身表現の金泥地の有無を調べると同時に、浄土の加飾された地の表現にも着目した。また皆金色技法は東アジアの美術史の視点からも捉える必要があるため、韓国の高麗時代の金泥技法を用いた高麗仏画の調査を国立中央ソウル博物館、リーアム美術館でも行なった。 高麗仏画においても、素材と画題との関係に応じて、描く対象全体を金彩で覆うという発想があることが知られる。しかしその技法への展開は日本の鎌倉時代とは別の途を辿ったとみなされ、やはり金泥地に截金という総金地の皆金色は日本だけに現われた表現といっていいことが、ほぼ確認できた。鎌倉時代仏画においての皆金色の成立に向けた展開状況はさらに多くの作品調査を待たなければならない。ただ今年度の調査研究を通じて新たに浮かんできた問題がある。それは金泥地に截金という皆金色技法は、仏身・仏衣の連結体に用いられる以前に、阿弥陀浄土などの地の表現に先行して用いられていたという可能性である。清涼寺蔵の阿弥陀浄土図はそうした例のひとつであるが、制作年代の位置づけが皆金色仏画の早い例と相前後するため、他の類例の調査を含めてさらに検討する必要があるものと思われる。
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Research Products
(1 results)