2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16652015
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Research Institution | Nippon Bunri University |
Principal Investigator |
太田 清子 日本文理大学, 工学部, 助教授 (70194157)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤星 哲也 日本文理大学, 工学部, 教授 (50279395)
岡本 壽夫 日本文理大学, 工学部, 教授 (50037222)
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Keywords | ひらがな表記 / 音韻 / 音節数 / 母音の構成 / 品詞 / リズム / 文節 |
Research Abstract |
西村本『おくのほそ道』の本文のリズムを中心に調査・分析するための作業として、まず本文をひらがな表記に直し、句読点で区切った上で2字ずつに分割した(日本語の音律の単位を2音歩とする土居光知氏の説による)。異なる文節や単語の1字ずつを組み合わせることは避けることとし、その場合は2字目に1字分の休止を置き、日本語として不自然ではないようにした(坂野信彦氏著『七五調の謎をとく』による)。『おくのほそ道』の一部について作業をした結果、次のような点が見られた。 1.文節が偶数の字数に収まるものは、文節の区切り目が最末尾に位置する2字の2字目にくるため、滑らかに音読でき意味も取りやすい。例「つき ひは」「みお くる なる べし」 2.文節が奇数の字数であるもので、自立語と付属語との区切り目が2字と1字の間にある場合は、音読しながら意味を取りやすい。例「たび に・」「さす らへ て・」 3.文節の字数が偶数であるものと奇数であるものの比率は、後者がやや高い。 4.同じ奇数の字数である文節が継続する場合、3つ以上並ぶことは少ない。そのことでリズムが単調になるのを防いでいると思われる。また、3つ以上並ぶときには、文節どうしの関係ぶ密接な部分とそうでない部分との区切り目が比較的明瞭であることが多い。例「ふね に・ のり て・ / おく る・」 5.句読点で区切った部分ごとの字数を調べると、7字から14字のものが多く、中世紀行文の代表である『東関紀行』が10字から18字に集中しているのに対して、字数の少ないことが認められる。このことが歯切れの良いリズムをもたらすと考えられる。 以上のような傾向から、『おくのほそ道』においては、ことばの意味と関わる心理的なリズムも考慮して、散文として滑らかで歯切れの良いリズムを生み出していると推測される。
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