2006 Fiscal Year Annual Research Report
文化遺産概念の体系化のための基礎的研究-その国際的衝突と無形化の動きを見すえて
Project/Area Number |
16653004
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
河野 俊行 九州大学, 大学院・法学研究院, 教授 (80186626)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 幸夫 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (20159081)
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Keywords | 無形文化遺産 / 無形文化遺産保護条約 / 世界遺産条約 / 無形的側面 / 作業指針 |
Research Abstract |
平成18年度は、最後の締めくくりの年であるという以上に、本研究にとってきわめて重要な年であった。本研究は無形文化遺産と国際法の問題を取り扱うことを主たる研究課題としているが、その中核となる無形文化遺産条約が30力国以上の批准によって2005年に発効したことを受けて、第1回締約総会、第1回政府間会合が平成18年度中に開催された。本研究最後の年度であったが、今後の研究も見越してこれらの動きの詳細をフォローした。これと並んで、有形遺産の無形的側面にも着目して研究を進めた。とりわけ近時の世界遺産条約の実務でも大きい問題となっている景観保全の問題をとりあげた。これは文化遺産自体の保全の問題ではなく、周辺地区の保全をとおした文化遺産のもつコンテクストの保全であり、文化的景観の保全につながる無形的側面だからである。具体的には、原爆ドーム周辺のバッファゾーン内に建設された高層アパートの事例研究とケルン大聖堂(ドイツ)の危機遺産登録問題の比較研究、および福山市靹の浦の架橋問題とドレスデン・エルベ渓谷(ドイツ)における架橋計画と危機遺産リスト登録問題の比較研究を行った。世界遺産条約におけるバッファゾーンの問題を法的に検討することが必要であることが明らかとなり、現在それを主たるテーマとする論文を執筆中である。これは世界遺産条約における作業指針の法的位置づけ、その遡及効、モニタリング実務の基準という観点をカバーする予定である。
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