2004 Fiscal Year Annual Research Report
日本のイノベーション・システム:「全国イノベーション調査」データに基づく実証分析
Project/Area Number |
16653019
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
伊地知 寛博 一橋大学, イノベーション研究センター, 助教授 (40344072)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田切 宏之 一橋大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (40114053)
古賀 款久 文部科学省科学技術政策研究所, 第1研究グループ, 研究員 (50344073)
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Keywords | イノベーション / イノベーション・システム / 専有可能性 / 民間企業 / 統計 / 戦略 / 組織変化 / 情報源 |
Research Abstract |
日本の民間企業におけるイノベーション活動に関する初の統計調査である「全国イノベーション調査」の結果が,『全国イノベーション調査統計報告』として2004年12月にようやく公表となった.そこで,16年度は,まずこの集計情報から,日本のイノベーション・システムの特徴についてEUに関するデータとの比較から,また,イノベーションのための情報源の利用と専有可能性における1990年代における変化について本領域における先駆的研究による結果との対比から,マクロ・レベルで明確化を図った. イノベーションの実現ならびに活動実施の状況については,日本はEUと比較して相対的に少数の企業によって担われており,とくに中規模企業における当該企業数の比率が少ないということが見いだされた.他方,イノベーション実現企業のみならず非実現企業においても,非技術的な変化である戦略・経営・組織上の変化を多く伴い,これらにかなり依拠して事業が行われていることが示された.プロダクト・コスト低減戦略や市場拡大・市場占有率向上戦略の実施,効率化を目的とした業務プロセスの組み替えならびに組織における機能部門・職能の内部化が相対的に高い比率を示していることは,広く日本企業全体の特徴として指摘されていることと符合する. また,大規模企業における情報源の利用についての変化については,より自社内の各部門の情報が利用されるようになっており,イノベーションの源泉となるシーズ(技術)側もニーズ(需要)側でも,社外からの情報を直接の契機とするというよりも,社外とは社内の各々の機能において対応する部門が情報を集積しており,それらの部門を通じてプロジェクトの進行にあわせて活用しているという変化が生じていることが伺えた.専有可能性については,市場に先行するよりも,プロダクトやプロセスに関する技術・知識を秘匿する傾向が強まったことが示唆された.
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