2004 Fiscal Year Annual Research Report
韓国の「財閥」企業におけるガバナンスと従業員参加の結合様式
Project/Area Number |
16653020
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
禹 宗うぉん 埼玉大学, 経済学部, 助教授 (50312913)
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Keywords | 財閥 / ガバナンス / 従業員参加 / コンセンサス / 金融危機 |
Research Abstract |
本研究は、韓国の「財閥」企業におけるガバナンスと従業員参加の相互関係を究明し、その望ましい結合様式の条件と政策を模索しようとするものである。具体的には、ガバナンスと従業員参加は、労使および社会的コンセンサスを通じて互いに結びついているという仮説に立ち、1)ガバナンスと従業員参加に影響する社会経済的条件、2)両者を現実的に構成する諸制度、3)その制度を肉付ける労・使・政の政策、4)それを根底で支えるコンセンサスの構造を分析することを通じて、現在の変化を正しく理解し、両者の望ましい結合様式を模索することを課題とする。 平成16年度は、このうち、主に1)2)3)に焦点を合わせて調査研究を進めた。関連文献の検討および関係者への聞き取り調査を通じて、仮説の基本的な部分が検証され、なお新たな知見が得られた。以下、まとめる。(1)1997・98年の金融危機は、国際的な資本の流入、M&Aの急速な進展、証券市場を通じた資本調達の増大をもたらし、「財閥」企業のガバナンス構造に大きな影響を及ぼした。(2)「財閥」企業は実績中心の成果主義という経営戦略で対応し、人事制度の改変と労使関係の再編を試みた。(3)このうち、殊に雇用政策の変化が、従来のコンセンサスの構造に大きな影響をもたらした。三星グループは「生涯職場」という企業理念をあきらめ、現代グループは指名解雇に踏み切った。さらに、両グループは雇用多様化を追求し、非正規の比率を高めた。(4)以後、両グループは、実績連動給与の増加など短期的なインセンティブの付与を通じて、労使間に新しいコンセンサスを作ろうとしてきた。(5)しかし、新しいコンセンサスの構造は未だ確立したとはいえない。雇用政策の急変で損傷された労使間の信頼が新たなコンセンサスの形成を妨げている。(6)これには政府の責任も一部認められる。リスクの分担を伴わない雇用流動化政策を一面的に推し進めたきらいがある。
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