2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16653053
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
邑本 俊亮 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 助教授 (80212257)
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Keywords | ワーキングメモリ / 感情推論 / 共感性 / コミュニケーション / リーディングスパンテスト / 物語理解 |
Research Abstract |
他者の気持ちを察する能力の個人差を生み出す要因として、それに関わるワーキングメモリ容量の違いを仮定し、それを測定するためのテスト(感情推論スパンテスト)を開発した。このテストは、読みに関わるワーキングメモリの測定法であるリーディングスパンテストを応用したもので、他者の発話を次々と聞きその人物の気持ちを判定・報告しながら、各発話の先頭の単語を記憶するというものである。大学生を対象に、このテストを実施すると同時に、リーディングスパンテストや共感性に関する心理測定尺度、物語理解における登場人物の感情推論に関する実験(プライミング法によるオンライン推論の生起を調べる実験)などを組み合わせて実施し、感情スパンテストの妥当性や位置づけを明らかにした。その結果、感情スパンテストはリーディングスパンテストと多少の相関はあるものの、人によっては2つのテストで得意、不得意が出てくることを確認した。また、心理測定尺度との関連では、2つのスパンテストは異なる傾向を示し、リーディングスパンテストの成績が他者の視点取得を測る尺度と相関が見られたのに対し、感情スパンテストの成績は過去の共感経験の豊富さを測る尺度(共感経験尺度)と相関が見られることがわかった。さらに、物語理解の実験との関連では、リーディングスパンテストだけでなく感情推論スパンテストも、登場人物の感情のオンライン推論生起を促進している(すなわち、両方のテスト成績が高い読み手が読解中に最も容易に感情を推論しやすい)ことが明らかとなった。 感情スパンテストそのものは、研究開始当初からよりよいテストを目指して、その材料や実施方法について試行錯誤してきたため、上述の結果がそのときに実施したテストに依存したものである可能性も否定できない。現在、テストの材料や実施方法はある程度固まっているので、今後順次追試を行なっていく予定である。
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