2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16653058
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中村 知靖 九州大学, 大学院・人間環境学研究院, 助教授 (30251614)
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Keywords | 表情認知 / 項目反応理論 / 認知能力 / 心理測定 |
Research Abstract |
本研究では刺激の特性と被験者の能力を同時に測定することが可能な項目反応理論を利用し,実験的な手法によって研究されてきた認知機能を能力としてとらえ,学力と言った従来の枠組みにはとらわれない新しい能力の測定方法を提案することを目的に本年度は表情カテゴリー判断課題を用いた表情認知能力測定に関する研究を行った. 実験1では,表情刺激として怒り,喜び,真顔の写真をそれぞれ25枚ずつ用意し,大学生181名に対して80msec刺激を呈示し表情カテゴリー判断を求めた.呈示した表情と一致した判断を正答として表情カテゴリー毎に2パラメタロジスティックモデルによる項目反応理論を適用した.その結果,怒り表情の25の刺激に関しては因子分析による1因子性も確認され,またモデルの適合にも問題がなく,怒り表情を用いた表情認知能力の測定が可能であることが示された.しかしながら,喜び表情に関しては多くの刺激において正答率が高く,現在の実験プロトコルでは喜び表情を用いた表情認知能力の測定は困難であることが分かった.また,怒り表情に関しその認知能力と性格5因子との関連を調べたところ情緒不安定性と有意な正の相関があることが分かった. 実験2では表情刺激として怒り,恐れ,嫌悪,真顔の写真をそれぞれ25枚ずつ用意し,実験1と同じ手続きで実験を行った.被験者は189名である.怒り,恐れ,嫌悪の表情毎に分析したところ,3つ全ての表情において1因子性が確認され,全ての項目がモデルに適合した.このことから怒り,恐れ,嫌悪といったネガティブ表情を利用して表情認知能力を測定することが可能であることが示された.また,ネガティブ表情毎の認知能力と性格5因子との関連では怒りの表情と社会的外向性とに有意な負の相関が見られた.今後は呈示時間を工夫し全表情呈示による実験課題を開発し,総合的な表情認知能力の測定を試みる予定である.
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Research Products
(3 results)