Research Abstract |
本研究の目的は項目反応理論を利用したさまざまな認知能力測定法の開発である。本年度は項目反応理論を用いた表情認知能力測定と項目反応理論を利用したResilience能力尺度測定に関する研究を行った。 実験1では,短時間呈示された表情(怒り36枚,喜び26枚,真顔20枚)に対するカテゴリー判断課題を72名の被験者に実施した。実験の後,個々の表情に対する判断の「難しさ」と「精度」の指標を項目反応理論によって算出し,それらを表情の物理的特徴から回帰的に予測した.その結果,怒り表情判断においては,(1)判断の難しさは顔の凝集性に規定されていること,(2)判断の精度は顔上部と下部に顕著な怒りの表出が認められる表情に対して向上すること,(3)判断は難しさ,精度共に顔上部の特徴の変化に主に影響を受けることが示された. 実験2では,短時間呈示された表情(怒り80枚,喜び74枚,真顔55枚,恐れ33枚,悲しみ50枚,驚き29枚,嫌悪9枚)に対するカテゴリー判断課題を47名に実施した。被験者数を考慮し,怒り25枚,喜び25枚,悲しみ26,恐れ25枚の刺激データを分析した。その結果,怒り,喜び,悲しみ,恐れを刺激として1次元の認知能力を測定することが可能であることが分かった。ただし,喜びは正答率が全体にかなり高く,モデルへの適合度の悪い刺激が多い。また,困難度の高い刺激は恐れで,低い刺激は喜びであった。 調査1では,Resilienceを「個人内資源の認知」「個人内資源の活用」「環境資源の認知」「環境資源の活用」の4側面からとらえる尺度を作成し,大学生447名に対して質問紙を実施した。高次因子分析を行った結果,4側面をとらえることが妥当であることが示された。また4側面ごとに項目反応理論を適用することも可能であり,これによって項目の困難度や識別力といった特徴を捉えることが可能となった。
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