2004 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙線生成核種7Beをトレーサーとした地球高層大気運動の研究
Project/Area Number |
16654043
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
吉森 正人 立教大学, 理学部, 教授 (30062657)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳町 朋樹 立教大学, 理学部, 助教授 (70200540)
佐々木 研一 立教大学, 理学部, 教授 (70022647)
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Keywords | 環境放射能 / 地上Be-7放射能 / 高層大気運動 |
Research Abstract |
銀河宇宙線や太陽高エネルギー粒子によって地球大気中には種々の放射性核種が生成される。これらの中でもBe-7は半減期53日の短寿命核種であり、地球には起源を持たず、宇宙からの高エネルギー粒子によってのみつくられる特異な元素である。Be-7は成層圏で生成後、周囲の微粒子に付着し、ゆっくりと成層圏から対流圏へ降下し、地上に到達する。地上に降下するBe-7の放射能強度を連続的に測定することにより、成層圏から対流圏にかけておこる数10日程度の比較的短いタイムスケールでおこる高層大気の運動を調べることが出来る。 本研究では銀河宇宙線および太陽爆発に伴う高エネルギー粒子によるBe-7生成率の高度分布を計算した結果、Be-7の70%が10-20kmの成層圏下部で生成され、残り30%が対流圏上部でつくられることが判った。また一般に成層圏では大気運動は少ないために、微粒子は成層圏中に1年程度滞在すると考えられている。もしこの仮定が正しいとすると、成層圏で生成されるBe-7は、半減期が53日であるためにほとんど地上に到達できないはずである。地上に降下するBe-7の濃度は、Be-7の付着した微粒子をダストサンプラーで収集し、Be-7から放射される477keVのガンマ線をGe半導体検出器で精密測定することにより求められる。Be-7の放射能強度を長期間測定した結果、夏と冬では2-3mBq/m^3であるのに対し、春と秋には6-8mBq/m^3と明確な増加を示した。この結果は、春と秋に成層圏と対流圏の圏界面で、大規模な大気の移動がおこることを示唆している。気象学的には、日本上空では春と秋に偏西風の影響を受け、移動性高気圧と温帯低気圧が対になって数日の周期で通過することが知られているが、現在、このような気圧配置によって成層圏と対流圏の大気の循環が発生する可能性を検討している。
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Research Products
(1 results)