2004 Fiscal Year Annual Research Report
電荷移動錯体における電場変調分光法による強誘電ドメイン観察
Project/Area Number |
16654049
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岸田 英夫 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助手 (40311633)
|
Keywords | 電荷移動錯体 / 強誘電性 / ドメイン観察 / 電場変調分光 |
Research Abstract |
本研究は、電荷移動型有機錯体における強誘電ドメインおよび運動を実空間上で観察し、ドメイン構造の性質、誘電性との関係を明らかにし、さらに、ドメイン構造のダイナミクスについての物理を明らかにすることを目的にしている。ドナー性分子とアクセプター性分子からなる有機錯体には、ドナー・アクセプター間で電荷移動がおこり、イオン結晶的になる物質群がある。そこでは、各分子に一つずつ孤立スピンが存在するために、スピンパイエルス機構により二量体化をおこし、ドナー・アクセプターをユニットとし、強誘電体になる物質がある。一次元的な結晶構造を有するために、強誘電ドメインは、分極方向が正負の二通りのみが許される180度ドメインを形成していると考えられる。本研究ではテトラチアフルバレンとクロラニルからなる電荷移動錯体に対し、誘電ドメインの実空間での観察を行った。具体的には、外部から1kHzの交流電場を試料に印加し、これによる反射率の変化分を測定し、その符号から分極の向きを決定した。その結果、100ミクロン程度の強誘電ドメインが観察された。また、10kV/cm程度の電場によって、ドメイン壁がドメインの大きさと同程度の領域にわたって移動していると考えられる結果が得られた。さらに高電場強度を印加すると金属的な状態へとスイッチング(転移)する様子も観察された。ここで観察されたドメインよりも小さな微粒子結晶が得られれば、誘電性、スイッチング現象を大幅にコントロールすることが可能になると考え、高分子中に電荷移動錯体のミクロンオーダーの微結晶を作成する方法について開発を始めた。その結果、ミクロンオーダーの微結晶が分散した薄膜は得られたが、得られた微結晶では、強誘電性を示さない異なる結晶形をとりやすいことが明らかになった。
|