2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16654052
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 宇史 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (10361065)
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Keywords | カーボンナノチューブ / 光電子分光 |
Research Abstract |
単層カーボンナノチューブのフェルミ準位近傍の微細電子状態を決定する目的で、高分解能高電子分光装置の更なる改良を行った。具体的には、電子衝撃高温加熱機構の製作、改良、調整により、1300Kという高温下での試料のアニーリングと、Arスパッタイオンガンによる試料表面清浄化のサイクルを定常的に行う事が出来るようにした。また、清浄試料表面の評価を行う目的で低エネルギー電子回折を備えた試料評価槽を制作し、ナノチューブ試料準備槽に接続した。さらにこれらの真空槽を光電子分光測定槽にドッキングすることによって真空中で大気に曝露する事無く清浄試料を光電子分光槽に搬送が出来るようにした。構築したシステムの動作確認のために、Cu(111)単結晶の標準試料の表面清浄化と超高分解能光電子分光測定を行い、表面特有の2次元自由電子的表面バンドを明確に観測することに成功した。カーボンナノチューブの電子状態を理解する上での参照物質となるキッシュグラファイト単結晶について本装置で高分解能角度分解光電子分光を行い、バルクバンドでは観測されないエッジ局在状態を見出すとともに、その分散形状とスペクトル強度が波数や表面状態に大きく依存していることも明らかになった。また、高温における測定によってフェルミ準位より上の電子状態を決定し、ホール的分散を示す結合πバンド、及び電子的分散を示す反結合πバンドにおいて、LDAバンド計算では予想されない異常なバンド分裂を初めて観測した。さらに、K点近傍のスペクトル形状の精密解析により、フェルミ準位近傍約200meV以下の結合エネルギーにおいて、準粒子が急激に長寿命化している事を見出した。自己エネルギーの実部と虚部の精密解析の結果から、グラファイト表面においてπ電子がフォノンと強く結合していると結論した。
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Research Products
(5 results)