2006 Fiscal Year Annual Research Report
カンチレバーを用いたナノマテリアル時代の新しい電子スピン共鳴測定法の開発
Project/Area Number |
16654057
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
太田 仁 神戸大学, 分子フォトサイエンス研究センター, 教授 (70194173)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大道 英二 神戸大学, 理学部, 助教授 (00323634)
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Keywords | カンチレバー / 電子スピン共鳴 / 強磁場 / 物性実験 / 磁性 / ナノ材料 |
Research Abstract |
量子コンピューター開発のためのqubitの探索・開発などを背景にカーボンナノチューブ,ナノドットなど現代は,このような物質群に代表されるナノマテリアルの研究が大変盛んとなっている。また,ナノサイズまでいかないまでも有機結晶や生体物質は,得られる試料がμgとこれまでの物理の測定の常識に比べ非常に小さく,このような微量系の電子スピン共鳴の観測は,市販のX-band(9.5GHz)ESRでは非常に困難で,新しい高感度な電子スピン共鳴の検出法が求められている。そこで,本研究のねらいは,従来のX-band ESRがもちいている空洞共振器とは全くことなる原理であるカンチレバーを用いて,特に高周波数強磁場ESRで高感度を実現するところにある。昨年度は,パルス磁場中と定常磁場中でのカンチレバーによる感度の違いを検証するため,東北大学金属材料研究所強磁場センターの定常磁場中でマイクロカンチレバーを用いたESR測定を行った.その結果,電磁波の振幅に変調を加えた場合(バイアスは直流)の方が,ブリッジ回路を交流バイアス電流で駆動した場合(電磁波に変調なし)に比べ,S/N比を大きく改善することができることが明らかとなった。本年度は,研究分担者の大道が10月に神戸大学に赴任し,引き続き神戸大学の強磁場ESRシステムを用いたCo(NH_4)_2(SO_4)_2・6H_2O(Co-Tutton塩)単結晶のパルス強磁場ESR測定装置の改良を進めた。とくに系統的にカンチレバーの磁場に対する角度を変化させる治具を作成し,信号の角度依存性測定をおこなった。その結果,この測定が試料のg値の異方性を用いて検出していることを確認し,最適な角度方向があることを明らかにした。なお,この研究に関する博士後期課程学生の木俣の日本赤外線学会研究会における発表「マイクロカンチレバーを用いた高感度テラヘルツ電子スピン共鳴のための技術開発」に対して,第2回日本赤外線学会奨励賞が授与された。
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