2006 Fiscal Year Annual Research Report
粘性揺動に起因する界面の不安定化と高分子球晶の分岐発生機構
Project/Area Number |
16654067
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
丹澤 和寿 名古屋工業大学, 工学研究科, 助教授 (60236776)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大出 義仁 名古屋工業大学, 工学研究科, 助教授 (10024340)
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Keywords | 高分子 / 球晶 / 成長速度 / 分岐 / 拡散係数 / 偏光顕微鏡 / 薄膜 / ポリパラフェニレンスルフィド |
Research Abstract |
本研究課題は、古くから知られていながらそのメカニズムが全く明らかになっていない高分子球晶の形成過程に関し、分岐発生過程をその場観察によって捕らえ、その実験事実にもとづき実体を解明していこうとするものである。既往の研究から、分岐発生直前に分子成長端の形状が不定形化することが確認されており、界面での何らかの不安定化要因がかかわっていることがわかっている。高分子球晶の分岐発生に関する研究は、これまで折り畳み部分の過剰なエネルギーの蓄積など、結晶側にその要因を求められることが多かったが、本研究課題では上述の実験事実にもとづきこの要因を融液相側に求めた。融液側要因による分岐発生の説明については"不純物"拡散に基礎を置くKeithらの古典的な理論があるが、我々の研究によればKeithらのモデルをあてはめてみると拡散係数が温度に対して負の依存性を示すという物理的に受け入れがたい結果となり、また、"不純物"の実体も不明瞭であるため、粘性液体でみられるヴィスカス・フィンガリングのような粘性にかかわる不安定化と考えた。このような問題意識にたち今年度は引き続きその場観察を継続するとともに、球晶構造変化を数値的に把握する目的で、ウェーブレット変換による解析を行ない、構造の温度による依存性を研究した。球晶のテクスチャーが温度の上昇と共に粗くなっていくことはよく知られており、これは、構造単位である板状結晶の厚さの温度依存性によるものと漠然と考えられてきたが、ウェーブレット変換の結果ではわずかに温度依存性が認められるものの、定数項部分の割合が非常に高く通常考えられているラメら厚の変化とは直接の関係は認めがたい結果となった。このことは、球晶の分岐発生要因が結晶側にないことを傍証していると考えられる。また、その場観察の結果からは、最も遠い場合で球晶成長端から80μmという遠方で薄膜融液部分に空孔の発生が認められた。これは成長界面における手繰り込みの効果が予想以上に広い範囲に及んでいることを示している。このことから融液相が通常の状態と異なっており、粘性に揺らぎが生じ界面の不安定化の要因になった可能性が認められる。
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