2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16655013
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
高田 十志和 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (40179445)
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Keywords | ロタキサン / 動的立体保護 / 加エタノール分解 / 立体保護 / 輪成分 / 並進運動 |
Research Abstract |
2年目の今年度は、動的立体保護概念の確立に向けて、ロタキサン軸上の官能基の反応性という観点から主に研究を行った。その結果、以下のような成果が得られた。 ロタキサン軸上のエステル官能基の加エタノール分解速度の評価:炭素鎖12のアルキル成分を持つ2級アンモニウム塩とジベンゾ-24-クラウン-8(DB24C8)の混合物を嵩高い酸無水物で処理し、末端封鎖により対応する[2]ロタキサンを合成した。このロタキサンのアンモニウム窒素上をアセチル化したものも合成した。NMRのNOE手法を用いた検討により、アンモニウム塩型ロタキサンでは、輪はアンモニウム窒素上に局在する一方、N-アセチル体では輪は自由に軸上を並進運動していることが確認された。 加エタノール分解反応を、それぞれの基質について、ベンゼン中でカリウムt-ブトキシドを塩基として行った。その結果、輪が自由に運動できるN-アセチル体の方が、輪の並進運動が制限されたアンモニウム体よりも安定で、加エタノール分解速度が十分遅いことがわかり、輪の運動性の効果によるものと判断された。 加エタノール分解における溶媒効果:ベンゼン中並びにエタノール中での加エタノール分解を行った。エタノール中ではN-アセチル体とアンモニウム体の分解速度はほぼ同じであり、興味深いことにこの反応では溶媒効果が認められないことがわかった。この理由は明らかでないが、少なくとも輪の運動性が低かったアンモニウム体では極性溶媒中でアンモニウムのロタキサン系特有の反応と見ることも可能である。一方、ベンゼン中では大きく様相が異なり、輪の運動性の高いN-アセチル体の加エタノール分解速度は、アンモニウム体のそれより十分小さいことがわかった。 これらの結果から、輪成分の並進運動によって軸成分上の官能基が著しく保護されていることが示され、立体的な嵩高さがなくてもその運動によって立体保護効果が発現すること、すなわち「動的立体保護」の可能性がさらに強く示唆された。
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