2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16655017
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
稲永 純二 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (50091244)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古野 裕史 九州大学, 先導物質化学研究所, 助手 (90335993)
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Keywords | 不斉識別 / DL-アミノ酸の光学分割 / エナンチオ選択的抽出 / エナンチオ選択的輸送 / 不斉輸送触媒 / キラルリン酸ジエステル |
Research Abstract |
3,3'-位にm-ターフェニル基、9-アントリル基、および9-アントリルエチニル基を有する光学活性1,1'-ビ-2-ナフトール(BINOL)のリン酸ジエステルを合成した。これらのうち、特に後の二つは、そのリン酸部が深いクレフト内に存在するため優れたレセプター型キラリティーセンシング素子として機能し、フリーのアミノ酸のエナンチオマー識別に極めて有効なことを見出した。例えば、ロイシン、バリン、フェニルアラニンなどのαアミノ酸や、3-アミノブタン酸のようなβアミノ酸のエナンチオマーが^1H-NMRスペクトル測定において明確なピーク分離を示した(両エナンチオマーの化学シフトの差は最高で約0.25ppm)。なお、一般にフリーのアミノ酸の^1H-NMRによるキラリティーの識別は難しく、わずかにキラルランタニドシフト試薬の例が知られているだけで、有機分子による有効な不斉識別の報告例はこれまで無かった。素子中のアントラセン環の立体的大きさと平面性ならびに環電流効果が有効に働いたためと考えられる。また、双性イオンであるアミノ酸に対し、アントラセン環のπ電子が塩基として働いてカルボン酸部とOH-π相互作用をもたらし、リン酸-アミンの相互作用と相まって二点固定型の分子認識をしている可能性が高い。9-アントリルエチニル基を有するBINOLのリン酸ジエステルを用いて、DL-バリンのエナンチオ選択的抽出実験を行った。キラルリン酸を含むクロロホルム溶液とアミノ酸の水溶液を1分間攪拌後、それぞれの層を分析したところ、抽出率27%でD-バリンが選択的にクロロホルム層に抽出され、そのエナンチオマー過剰率は71%eeであった。これは従来のキラル金属錯体を用いて得られたものよりも高い値である。現在、U字管を使った輸送実験を行っている。
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