2004 Fiscal Year Annual Research Report
シクロブタジエンジアニオンを活用した新しい四員環の合成化学の開拓
Project/Area Number |
16655025
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
松尾 司 分子科学研究所, 錯体化学実験施設, 助手 (90312800)
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Keywords | 四員環 / シクロブタジエン / シクロブタジエンジアニオン / 二電子還元 / 芳香族性 / 遷移金属錯体 / π電子系 / ケイ素 |
Research Abstract |
平成16年度は、四員環の合成化学を開拓する上で鍵化合物である四員環6π電子系シクロブタジエンジアニオンの合成法を確立した。ケイ素置換シクロブタジエンを金属リチウム、ナトリウム、カリウムを用いて二電子還元することにより、シクロブタジエンジアニオンをジアルカリ金属塩として定量的に合成することに成功した。還元反応には、テトラヒドロフランやジメトキシエタンなどの極性溶媒を用いて行った。溶媒やアルカリ金属の種類によって反応時間は異なり、概ねリチウムが数時間以内に反応が完結するのに対し、ナトリウム、カリウムは半日から1日程度要した。対カチオンが異なるシクロブタジエンジアニオンを安定に合成・単離出来たことは、シクロブタジエンジアニオンを合成試剤として活用していく上で大変重要な知見である。また、ケイ素置換シクロブタジエンの大量合成法を開発することが今後の課題である。 合成したシクロブタジエンジアニオンジアルカリ金属塩の構造学的特徴と磁気的性質を核磁気共鳴スペクトルなどの分光学的手法を用いて研究した。四員環6π電子系に由来する芳香族性について明らかにした。アルカリ金属が高周期になるにつれてイオン性が増大するのに起因して、金属イオンと四員環のアニオン炭素との分極の程度が増大した。また、置換基であるケイ素とアニオン炭素との分極の程度も増大した。 ケイ素置換シクロブタジエンジアニオンジリチウム錯体と遷移金属ハロゲン化物との反応性について検討したところ、いずれも反応の進行が認められた。しかし、生成物の単離・同定には至っていない。今後は、反応溶媒や反応時間等の反応条件を最適化するとともに、対カチオンが異なるシクロブタジエンジアニオンを合成原料に用いて検討する予定である。
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