2004 Fiscal Year Annual Research Report
カチオン-π相互作用を利用する多機能有機触媒の開発
Project/Area Number |
16655034
|
Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
山田 眞二 お茶の水女子大学, 理学部, 教授 (30183122)
|
Keywords | 有機触媒 / 速度論分割 / カチオン-ーπ相互作用 / DMAP誘導体 / 第二級アルコール / コンフォメーションスイッチ |
Research Abstract |
近年、不斉反応の触媒化は有機合成化学において重要なテーマになっており、これまで有機金属錯体を触媒として用いることで多大な成果が挙げられてきた。一方、金属を用いない有機触媒もごく最近注目されてきており、有機金属触媒と相補的に用いられてきつつある。しかし、その効率は必ずしも満足のいくものではない。本研究では高い効率を有する新しいタイプの有機触媒の開発を目的とし、反応の途中で構造が変化するスイッチ機能を有する新しいタイプの触媒を開発することを目的としている。 本年度は、これまで我々が見いだしたチオカルボニル基とピリジニウムとの分子内カチオン-π相互作用を利用するDMAP(ジメチルアミノピリジン)誘導体を合成し、第二級アルコールのアシル化による速度論分割における触媒能を検討した。不斉補助基としてアミノ酸から容易に誘導できる1,3-チアゾリジン-2-チオン類を用い、4-ジメチルアミノニコチン酸アミドを合成した。これらを触媒として、第二級アルコールの速度論分割を検討した。'その結果、不斉補助基の4位にtert-ブチル基を有する触媒を用いると高い選択性が得られることが明らかになった。溶媒としてtert-ブチルメチルエーテル、アシル化剤としてイソ酪酸無水物を0.7当量、塩基としてトリエチルアミン0.8当量の存在下、触媒を0.5当量用いることで最も良い選択性(s値、20)を与えることが明らかになった。また、本触媒反応により種々の第二級アルコールの速度論分割を検討した結果、様々なタイプのアルコールに対し高い選択性が見られることがわかった。さらに、本触媒反応において触媒のコンフォメーションが変化していることを、NMR、X線結晶構造解析、分子軌道計算により明らかにし反応機構を推定した。 今後、本触媒反応により、meso-ジオールの非対称化反応を検討する予定である。さらに、他の反応として、C-アシル化反応も検討する計画である。
|