2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16655046
|
Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
藤木 道也 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (00346313)
|
Keywords | パリティ / キラリティ / ポリシラン / 光学活性 / らせん / 微粒子 / 円二色性 / リモネン |
Research Abstract |
1.弱い核力は自然界を支配する基本的な4つの力の一つであり、素粒子、原子を左右非対称(パリティ非保存)にする。近年、分子についてもパリティ非保存性の理論が報告されているが、理論的にキラル分子間のエネルギー差は10^<-15>J/molと極めて小さく、これまで観測に成功していない。本研究では、不斉基を含まないポリシラン(poly[n-decyl-isobutyllsilane],PDBS,Mw=1.6x10^6)を用い、重元素効果による増幅効果、溶媒蒸発過程での非平衡開放系などの相乗効果による分子パリティ非保存性の増幅検出を試みた。 2.旋光度と純度が等しい(S)-または(R)-リモネン(Wako)/イソオクタンの50/50%(wt/wt)の混合溶液に、PDBSを0.5%(wt/wt)の濃度で溶解させ、その溶液を石英基板上、23-25℃で自然蒸発させた。(S)-体、(R)-体について交互に10回ずつ実験を行った。キャスト膜を回転させCD符号の逆転がないことを確認した。 3.リモネンのキラリティに誘起され、PDBS主鎖に左右どちらか一方向に偏ったらせん構造が膜中に発生した結果、主鎖由来の励起子CD信号が290nmと310nm付近に観測された。しかしながら実験ごとにその符号と強度が大きく変動した。非対称因子g値(=Δε/ε)に換算し平均を取ると、(s)-体からのg値は(R)-体のそれより約2倍大きく現れた。ポリシラン系においてパリティ非保存性検出の可能性がある。(第85回日本化学会春季年会(1PA040)にて発表。) 4.現在、Mw=5x10^4のPDBSを用いて、リモネン誘起の光学活性ナノ微粒子系を作製したところ、g値の絶対強度が(上記キャスト膜と同じく)(S)-体と(R)-体の間に約3倍の差が再現よく観測された。分子パリティ非保存性を検出している可能性が高まってきた。
|
Research Products
(2 results)