2004 Fiscal Year Annual Research Report
時間分解円二色性測定による不斉認識超分子の不斉ダイナミクスの解明
Project/Area Number |
16655050
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊藤 攻 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (30006332)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒木 保幸 東北大学, 多元物質科学研究所, 助手 (80361179)
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Keywords | 円二色性 / 過渡吸収 |
Research Abstract |
研究初年度においての目標は、ホストとして亜鉛ポルフィリン二量体、ゲストとして不斉を有するジアミノシクロヘキサンが形成する超分子の不斉ダイナミクスを、その光励起状態で検出することであった。ジアミノシクロヘキサンを用いる利点は、S体R体を安定して得られる事と、ホストとの錯形成定数の高さ(〜10^7M^<-1>程度)による。また、亜鉛ポルフィリンに錯形成すると考えられるビナフトールなども用いることで、超分子形成におけるビナフトールから亜鉛ポルフィリンへの励起エネルギー移動過程とそれに伴う超分子の不斉を観測することを試みた。結果、もっとも基本的な超分子の基底状態の円二色性測定に成功し、レーザー励起ごナノ秒領域で観測される励起3重項における過渡円二色性の測定に成功した。また、励起一重項においても、不斉超分子から発せられる蛍光の円偏向成分を観測することにより、円二色性蛍光寿命測定を試み、これに成功した。今後、観測された超分子の円二色性の理論的妥当性、また得られた結果の改善を行っていく必要がある。 また、この超分子は良好な電子ドナーとして働くことが明らかであることから、適切な電子アクセプター(C_<60>または、ニトロ化芳香族)を用い、極性溶媒中で光誘起電子移動反応を引き起こすことができる。この結果、亜鉛ポルフィリン2量体、ジアミノシクロヘキサンから形成された超分子は、カチオンラジカル形成後、その不斉を解消している可能性があることが判明した。今後、カチオンラジカル状態での不斉超分子の熱力学的安定性等を考慮した検討が必要と考えられる。
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