2004 Fiscal Year Annual Research Report
有機無機複合イオン伝導体のナノ構造とイオン伝導機構
Project/Area Number |
16655051
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
河村 純一 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (50142683)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神嶋 修 東北大学, 多元物質科学研究所, 助手 (90321984)
服部 武志 東京理科大学, 理学部, 教授 (20029234)
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Keywords | 柔粘性結晶 / 超イオン導電体 / ナノ構造 / 有機無機複合体 / 高分子固体電解質 / NMR / イオン伝導度 / 拡散係数 |
Research Abstract |
本研究は、有機イオンと無機イオンの複合体で新たに見出された特異なナノ構造を有する高イオン伝導相について、その確証と構造・イオン伝導機構の解明を行なうことを目指している。 本年度は、有機アンモニウム塩として融点直下で柔粘性結晶相を持つテトラブチルアンモニウムを中心に、その相転移挙動とイオンダイナミクスを熱分析、X線、ラマン散乱、プロトンNMR、およびイオン伝導度測定により詳しく検討した。 その結果、有機イオンが回転している柔粘性結晶相では、10-5S/cm程度のイオン伝導度を示し、pfg-NMR法による拡散係数測定の結果から、有機分子イオンであるテトラブチルアンモニウムイオンも並進拡散している事が分かった。更に、転移点以下の秩序相においても、NMR的に速い運動を示す信号成分が残り、その部分の拡散係数は柔粘性結晶相とほぼ変わらない事が分かった。これらの実験事実を説明するために、プラスチック・ドメイン・モデルを構築し、イオン伝導度、NMR信号線強度、拡散係数の値を定量的に説明できる事が分かった。 一方、インド・バラチア大のS.Sevalasekarapandian教授らの開発した高分子アルコール系のイオン伝導体についても同様な研究を行なった結果、これらの物質では二段階のガラス転移を示し、高いプロトン伝導性は第二のガラス転移以上で出現する事を明らかにした。これは、水素結合と高分子鎖のファン・デル・ワールス結合の競合によるナノ分相構造に起因するものと考えられ、更に研究を継続中である。 これらの成果は、日本物理学会、固体イオニクス学会などで発表し、現在、論文を投稿中である。また、平成17年7月にドイツで開催される、第15回固体イオニクス国際会議において発表される予定である。高分子アルコール系については、第8回アジア固体イオニクス国際会議で一部発表された。
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