2004 Fiscal Year Annual Research Report
円筒状のホスト分子を用いたカーボンナノチューブの選択的分離・可溶化の研究
Project/Area Number |
16655057
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川瀬 毅 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (10201443)
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Keywords | 円筒状共役分 / カーボンナノチューブ / フラーレン / 錯形成 / 分子間相互作用 / 選択的分離 / 可溶化 |
Research Abstract |
カーボンナノチューブ(CNT)は、その特異な構造と電子物性のためナノテクノロジーにおいて欠かせない材料になると期待されている。しかし、CNTは、構造・形状のそろっていない不溶性のポリマー状物質であるため、分離・精製する手段を開発することが急務となっている。最近申請者らは円筒状の共役系をもつホスト分子(カーボンナノリング)を合成し、フラーレン類と非常に安定な錯体を形成することを見出した。本研究ではその成果を発展させ、CNTを可溶化するとともにサイズのみならず螺旋度によっても分離できるホスト分子の構築をめざして研究を行っている。 McMurry反応によって前駆体である環状フェニレンビニレンを合成し、臭素化-脱臭化水素化によって複数の二重結合を一挙にアセチレン結合へと変換する方法で、円筒状の構造をもつ[n]環状フェニレンアセチレン([n]CPPA)類を合成してきた。本年度は、著者らの研究の中でもっとも空孔サイズの小さい[5]CPPA(10.8Å)と、もっとも大きい[10]CPPA(20.4Å)を合成した。[5]CPPAは17.4Åの空孔サイズをもつ[8]CPPAとかなり安定な錯体を形成することがわかった。その錯形成の熱力学パラメターはエントロピー項の効果が大きいことを示し、歪んだπ系において分極構造の寄与が大きいことがわかった。一方、[10]CPPAは比較的安定であり、また、その空孔サイズは、物性的に特に興味深いカーボンナノチューブである(10.10)CNTを取り込めるだけの大きさがあることから、ホストとしての性質を今後検討してゆく計画である。
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