Research Abstract |
エネルギー代謝制御にかかわる酵素であるAMP活性化タンパク質リン酸化酵素(AMPK)は運動による筋収縮により活性化されることから,運動療法がもつ抗糖尿病効果の発現要因として注目されている.酵素AMPKの活性化剤としてAICARが有望視されているが,AICARは入手困難でありその類縁体の合成研究も十分ではない.そのことが糖代謝活性化機構の解明の障害となっている現実がある。そこでこのAICARに着目し,糖代謝活性化機構の解明を展望して,AICAR自体及びその誘導体の系統的合成法の確立を目的とする研究を実施した. 最初に,イノシンからアミナール型保護を経由するAICAR合成を考案した.そのものを水酸化ナトリウム水溶液中で加熱還流したところ,想定した保護されたAICARではなく,開環反応と同時にアミナール保護基も脱離して,最終目的化合物であるAICARを得た.反応機構を考察して,種々誘導体を用いて最適条件を検討した結果,メトキシエトキシメチル体で全4段階,総収率56%という実用的なAICAR合成法を確立することができた. AICARは細胞膜透過性が低く,また細胞内ですばやく代謝されるので,AMPKを活性化させるためには過剰量の投与を必要とする.脂溶性の高い2位置換AICAR誘導体はこの欠点を克服できると考え,先の方法を応用して,アデノシンを出発原料として,その臭素化,鈴木カップリング,トリオールの保護,酸化的脱アミノ化,アミナール保護基の導入,それに続く開環反応という合成経路を考案した.実際の反応の結果,最終的に目的とするフェニル基,置換フェニル基,複素環置換基,及び置換ビニル基を有する7種類の2-アリールAICAR誘導体の合成に成功した.
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