2005 Fiscal Year Annual Research Report
超低摩擦アモルファス膜の終端原子制御を利用した極低溶着性工具の開発
Project/Area Number |
16656053
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
山根 八洲男 広島大学, 大学院工学研究科, 教授 (70140564)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中佐 啓次郎 広島大学, 大学院工学研究科, 教授 (80034370)
加藤 昌彦 広島大学, 大学院工学研究科, 助教授 (70274115)
關谷 克彦 広島大学, 大学院工学研究科, 助手 (80226662)
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Keywords | アモルファス / 炭化珪素 / 切削工具 / 摩擦低減 / 溶着性 / コーティング |
Research Abstract |
本年度は,アモルファスSiC薄膜による極低溶着性工具の開発を更に進める目的で以下の通り実施した. (1)超硬K10種工具を表面粗さが1nmRa程度となるように研磨し,これにヘリコンスパッタ法によりSiC-2.6%TiをPVD被覆したもの及びDLC被覆したものを,原子間力顕微鏡により観察した.その結果,アモルファスSiC皮膜は1.1nmRa程度であるのに対してDLC皮膜の粗さは3.8nmRa程度と大きく,アモルファスSiC薄膜が極めて平滑なものであることがわかった. (2)(1)で作成した工具を用いてオイルミスト潤滑下でAl-Mg-Si系熱処理型アルミニウム合金展伸材の旋削実験を行ったところ,昨年度の結果と同様に大きな凝着抑制効果が得られたが,表面を研磨しなかった工具に被覆した場合に比べ,凝着抑制効果は小さいものであった. (3)アモルファスSiC被覆工具,DLC被覆工具及び未被覆工具を用いて旋削実験を行ったところ,コーティングによる凝着抑制効果はオイルミスト供給による凝着抑制効果よりも小さいことがわかった.特に工具表面未研磨品ではこれらの差が大きく,工具表面の凹凸による切り屑-工具すくい面接触界面の隙間(マイクロチャネル)にオイルミストが侵入し潤滑効果が発現されることがわかった. (4)摩擦試験を実施したところ,DLC被覆工具では表面研磨品に被覆した場合の方が研磨しない場合に比べ被覆の密着強度が高く,これに対してアモルファスSiC被覆工具では研磨しないほうが皮膜のはく離が生じにくかった.このことからアモルファスSiC薄膜と超硬工具とアンカー効果により接着されていると推察される. 以上のことから,アモルファスSiC被覆工具は,ある程度の工具表面粗さを維持したものに被覆し,オイルミスト潤滑を併用することにより凝着低減効果を最大限に引き出すことができると考えられる.
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