Research Abstract |
振動流型人工心臓は,直円管の振動と,その先端に備えたバルブ機構のみであるから,単三電池程度の大きさに小型化し,体内に埋め込むことができる.各臓器の上流にこの人工心臓を埋め込めば、これらの血流を最適制御することが可能である.これは,各臓器の機能を最大限引き出し、遠い将来,人類の平均寿命を延ばす可能性がある.また,血流の主な働きは,酸素および二酸化炭素の運搬能,免疫機能,そして凝固機能等があげられるが,おそらく,これらは,人間の体温付近で,その性能が最大になるように長い年月をかけて人類が進化してきたはずである.そこには,物質伝達特性の血流温度に対するピーク等,移動現象としての特異現象が存在する可能性がある.本研究では、このように流体力学的視点から、生命現象を俯瞰することが主目的である。 現在,振動流型人工心臓の振動管内に人工肺用の中空糸を挿入し,ポンプ機能と酸素付加機能の両方を実現させるべく,新型実験装置を製作中であり,所定の成果達成に向けて努力している.溶血や血栓発生に関する,ナノスケールレベルのバイオ流体力学的研究にも着手している.すなわち、韓国のKorea大学人工臓器研究センターのDr.Chagmo Hwang氏を招聘し、人工心臓における血栓生成を防ぐ新生体適合性材料(ヘパリンコーティング)とその製造工程におけるヘパリン分子の流動ダイナミクス解析プログラムの試作を行った。来年度以降、本シミュレーション結果と実験結果を対比して、実用に供するバイオ・ナノマテリアル科学と流体科学の学際的学問体系を確立していきたいと考えている。
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