Research Abstract |
我々は,血液流の循環に関し,生体のもつ機能を効果的に解析するための独創技術と,その機器に関する知識と運転ノウハウを有している.すなわち,密接な医工連携の下,血液の振動流成分を自由に制御することができる人工心臓を長年開発してきた実績がある.その振動流型人工心臓は,直円管の振動と,その先端に備えたバルブ機構のみであるから,単三電池程度の大きさに小型化し,体内に埋め込むことができる.各臓器の上流にこの人工心臓を埋め込めば、これらの血流を最適制御することが可能である.これは,各臓器の機能を最大限引き出し、遠い将来,人類の平均寿命を延ばす可能性がある.本研究では血流の物質伝達特性に関する生命機能に,理論流体力学の立場から迫ることを目的としている.2年目である平成17年度の主な成果は,東京大学医学部に協力を依頼して,従来の人工心臓へ中空糸による心肺機能を付加し,酸素濃度を計測しながら牛血流を吐出できる装置系を構築し,専門学会で紹介したことである.計測の困難さと,牛血の個体差によるデータのばらつきに起因して,現在のところ,振動流が物質伝達特性に及ぼす影響を解明しきれていないが,今後,さらに装置を工夫したり,コンピュータシミュレーションを導入するなどして,新型の人工心臓を完成させたいと考えている.なお,報告者は,平成17年10月付けで東北大学から大阪大学へ転任し,幸いにも教授職を得た.実験設備の移転,整備等に時間を割かれているが,研究室スタッフのご助力も得て,研究計画の遂行に今のどころ問題は生じてない.最終年度は研究環境を整備し,流動ダイナミクスの視点から生命機能に関する有益な知識を獲得したいと考えている.
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