Research Abstract |
本研究は,伝熱面表面の濡れ性を超親水から超撥水にわたり,広範囲に接触角をコントロールすることにより,沸騰・蒸発・凝縮などの相変化伝熱を制御することを目的とする. 本年度は,超撥水面を用いてプール沸騰の基本的な特性を調べた.使用した超撥水面は,直径17mmの銅丸棒の基材にテフロン微粒子を分散させた液で電解メッキにより作成した.メッキ層の厚みは10μm程度であり,メッキの過程で自己組織化によりフラクタルな構造になるため,撥水性が助長されて接触角152°の超撥水状態となる. 実験は,サブクール度0,5,10Kの3種類で行った.伝熱面の接触角が大きくぬれにくいため,水中でも空気の層が離れない.そのため,伝熱面を過熱し20分間沸騰させて脱気した.その後,伝熱面の気泡が消滅するまで冷却した後,実験を開始した.伝熱面ブロックのヒーター入力をステップ状に上げながら,各点で定常状態にした後,測定した.伝熱面温度が急上昇し始める直前までのデータを得た後,ヒーター入力を下げながら同様に測定した. その結果,以下の項目が明らかになった. (1)通常の表面では気泡核が活性化しない,非常に低い過熱度で伝熱面上に気泡が出現する. (2)加熱面温度を上昇させる場合は,核沸騰域はほとんど現れることなく,過熱度数Kで膜沸騰に移行する. (3)膜沸騰域から加熱面温度を下降させていくと,1K以下の極めて低い過熱度においても安定な蒸気膜が伝熱面上を覆い,膜沸騰を維持することができる. (4)サブクール沸騰においては,気泡が1度も離脱することなく,膜沸騰へ移行する.すなわち,RohsenowとGriffithが提唱する気泡充満モデルにより現象が説明できる.
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