マイクロアクチュエーター用水素貯蔵合金モジュールの作製と特性評価

2004 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 16656084
• Research Institution: Nagasaki University
• Principal Investigator: 香川 明男 長崎大学, 工学部, 教授 (00093401)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 水本 将之 長崎大学, 工学部, 助手 (90325671)
• Keywords: 水素貯蔵合金 / アクチュエーター / 変形挙動 / 電解メッキ

Research Abstract

水素貯蔵合金は,水素吸脱蔵時に大きな体積変化を示すことが知られており,この体積変化を応用したマイクロアクチュエータの開発が期待されている.本研究課題では,機械加工が比較的容易で,常温・常圧近傍での水素吸蔵量が大きいバナジウム基合金を用いて,水素吸脱反応における合金の膨張・収縮挙動を曲げ挙動に変換するモジュール作製し,水素導入時の変形挙動を調べた.アーク溶解により作製したV-15at%Ti合金を幅1.2〜5mm,長さ40mm,厚さ80μmの短冊状に加工し,合金の片面に電解メッキにより厚さ50μmの銅メッキを施して合金/メッキ積層モジュールを作製した.変形時の合金/メッキ界面の剥離を防止するために,種々の温度および保持時間で真空熱処理することにより合金/メッキ界面の拡散接合を試みた.真空熱処理の結果,800℃で2時間保持した試料においてのみ合金/メッキ界面に拡散層が観察された.そこで,幅1.2〜5mmのV-Ti合金の片面に厚さ50μmの銅メッキを施した後,800℃で2時間の真空熱処理をして合金/メッキ界面を拡散接合して作製した積層モジュールに,形状変化測定装置内で10atmの水素導入を行って,その変形挙動を観察した.幅5mmのモジュールは,モジュール先端が水平方向に約17mmと最も大きな変形を示したが,幅方向への変形も大きく,合金表面に亀裂や剥離が観察された.幅1.2mmおよび2.5mmのモジュールは,それぞれ14mmおよび12mmと幅5mmのモジュールよりも変形は小さかったが,合金/メッキ界面の剥離は観察されなかった.変形速度は0.6〜0.8mm/sであった.これは,バナジウム中の水素の拡散係数と合金膜の膜厚(80μm)から予想される値にほぼ一致していた.実用に際しては1〜2mm/sが望ましいが,そのためには合金膜厚を薄くする必要があるが,強度の低下が予想される.以上の結果から,変形挙動に優れ,かつ耐久性に優れたモジュールの設計指針が得られた.今後は,変形力やサイクル特性などについて調べ,各種モジュールの試作を行う.