2004 Fiscal Year Annual Research Report
社会基盤整備の合意形成過程における「見かけ」の合意性と潜在的価値コンフリクト
Project/Area Number |
16656131
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀田 昌英 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教授 (50332573)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小澤 一雅 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (80194546)
岩橋 健定 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教授 (50293999)
橋都 秀爾 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (90361526)
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Keywords | 社会的意思 / 合意形成 / 価値観対立 / 社会基盤マネジメント |
Research Abstract |
本研究は、社会基盤整備計画の合意形成過程においての「見かけ」の合理性と、それにより覆い隠された潜在的価値コンフリクトの実情を明らかにすることを目的としている。 行政主体が利害対立の調整を行うときに期待されることは、行政が依拠することが許されている種類の合理性をもって何が妥当かを社会に提示することである。ここでいう合理性とは、自らは政治的判断をすることができない以上、科学性、論理一貫性、実証性等の事実認識を根拠にする他なく、これは価値規範的な問題に対する答えを導出するものではない。よって価値の対立を行政が自分達だけで異なる価値観を調整し、集合的価値規範を提案して選択肢を決定することは許されない。 以上を前提とすれば、行政セクターが多元主義的合意形成観を実質的にも形式的にも保ちながら、意思決定プロセスを独自に運営することは難しい。これに対する方法として、異なる価値観をめぐる様々な対立や葛藤を内部的に解決しつつ、そこで辿り着いた選択肢があたかも科学的合理性に基づく考察のみから正当化しうるかのように社会に提示することが考えられる。 本年度は現在わが国における主要関心事である公共事業の決定に関して合意形成過程の現状を知るために、高知市における実際の社会基盤計画決定に関わった行政側の人物にヒアリング調査を行った。それにより高知市における9つの公共事業、政策決定の背景、進め方、行政の関わり方、価値観の対立関係等を知ることで以下のことがわかった。行政が合意形成過程において判断を行う際の価値規範としては民主性、公平性、円滑性、財政的制約が考えられ、これらを基準として総合的に判断することを合理的として、計画策定、委員会や住民説明会の構成、進行、決議の方法を決めている。しかし裁判における判決や議会における請願、陳情の採択により判断を変更することもあることから、行政の考える合理性は完成されたものではなく司法機関や立法機関がそれを補助している形になっていると考えられる。 来年度は社会基盤整備計画の合意形成過程毎に意思決定主体の適切な選択を勘案するための制度設計方法を提示したい。
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