Research Abstract |
落石は道路,鉄道,住宅等へ影響を及ぼす斜面災害の中でも発生頻度の比較的高い災害現象の一つである。しかし,落石現象は多くの場合突発的に発生するものであり,現象の解明に直接役立つ具体事例の集積が難しい。また,斜面上を落下する落石の運動形態や衝突現象など,落石対策の計画・設計に必要な事柄についても未だ十分には解明されていないのが現状である。現在までの落石に関する研究では,実物大スケールの実験は数少なく,事例の収集に基づき多変量解析による要因分析,個別要素法や質点系手法による数値シミュレーションなどが行われているが,多くのパラメータにより複雑に振る舞うことが知られており,これらを打開する方法が待望されている。そこで,多くのパラメータが自明となり,応力条件を等価にすることが出来る遠心模型実験手法を用い,破砕を伴いながら衝突と跳躍を繰り返す落石現象について物理モデル化を行い,その運動形態・衝突現象を解明,および落石による衝撃圧の推定を行うことを目的とするものである。 本研究にて開発した遠心場落石発生装置は,リボルバー式落石ホルダー(8個搭載可能),それを回転させるモーター,そして落石を斜面に落下させる落石開口部(空圧式高速シャッター)から成り立っている。本装置を用いることにより最大8回の落石実験を行うことが出来る。既往の研究から最大跳躍量は,一般的な斜面形状の場合には落石の形状によらずほぼ2m以下であるが,斜面勾配が急変する箇所では5mを超える。そこで,斜面勾配が45度から60度に変化する斜面を作成し,落石実験を行った。落石はφ20mmのアルミ球を使用し,遠心加速度は20Gとした。なお,実験時の落石の挙動を側面からCCDカメラ(30万画素)により観察した。 落石は勾配45度にて跳躍後,60度の斜面を飛び越えて落下した。今回の実験では30フレーム/秒の通常のカメラを使用した。しかし,遠心模型実験での落石現象は約0.1秒の高速運動であるため,落石の回転等については把握することが出来なかった。この結果から次年度は,高速度カメラを使用することで,より詳細に落石の運動形態の把握を行う予定である。
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