2004 Fiscal Year Annual Research Report
プロスペクト理論を用いた不確実性下における交通行動の分析
Project/Area Number |
16656154
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北村 隆一 京都大学, 工学研究科, 教授 (60252467)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉井 稔雄 京都大学, 工学研究科, 助教授 (90262120)
菊池 輝 京都大学, 工学研究科, 助手 (00343236)
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Keywords | 出発時刻選択 / 不確実性 / セーフティーマージン / 認知所要時間 / ダイアリーアンケート |
Research Abstract |
本年度は,6週間のダイアリー調査と,普段の通勤行動SP調査に基づき,通勤者が所要時間の不確実性認知を考慮して,出発時刻を決定しているという仮定のもと,その出発時刻選択の重要な要因の一つであるセーフティーマージンの規定要因を明らかにするための分析を行った.分析結果のうち,ダイアリー調査から得られる所要時間の平均値・標準偏差,個人属性に関する変数を説明変数,通勤行動調査により得られる認知最大最小幅を被説明変数とする回帰分析結果では,自動車利用の場合ダイアリー所要時間の標準偏差は認知所要時間の最大最小幅に有意に影響を与えておらず,ダイアリー所要時間の平均値が認知所要時間の最大最小幅に有意な影響を与えていることが明らかとなった.すなわち,自動車通勤者は所要時間のばらつきを正確に評価しているのではなく,所要時間の平均値が増大すると不確実性が増大しているかのように認知していることが明らかになった.不確実性下では,所要時間のばらつきもバイアスを持って認知されているのである. さらに,そのような傾向は,不確実性が大きく比較的良く認知されていると考えられる高速道路利用通勤者において強く見られたことから,不確実性が大きい場合ほど認知のバイアスは大きくなるのではないかと推察される. また,基準化したセーフティーマージンの回帰分析結果では,自動車通勤では基準化した認知所要時間最大最小幅が基準化セーフティーマージンを有意に増大させていた. 総じて自動車通勤では,通勤者は所要時間の不確実性をバイアスを持って認知し,その認知にもとづきセーフティーマージンを取る,という意思決定構造が段階的に明らかとなった.この知見は,認知所要時間に基づく通勤者の意思決定行動を観測される実所要時間により記述する分析手法に疑問を投げかけるものである. また,本年度は,次年度実施予定の室内実験のためのシミュレータ開発も行った.
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Research Products
(2 results)