2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16656156
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
小林 一郎 熊本大学, 工学部, 教授 (40109666)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星野 裕司 熊本大学, 工学部, 助手 (70315290)
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Keywords | フランス / 鉄筋コンクリート橋 / エヌビック社 |
Research Abstract |
鉄筋コンクリート橋の発生と発展を明らかにすることを目的として、今年度は主にエヌビック社の橋梁建設について研究をおこなった。エヌビック社は19世紀末に活動を開始し、エヌビックシステムという技術に基づいた鉄筋コンクリート構造物の一般化に大きく貢献した会社である。同社はまた、アーチ橋のスパン記録を約10間で2度樹立していることや、短期間で大量の橋梁を建設しており、橋梁史上特異な存在であるが、通常は多々ある原始的な試みのひとつとして位置づけられる傾向にあり、その実体はほとんど明らかにされていない。本研究では、橋梁建設におけるエヌビックシステムの分析を中心として、鉄筋コンクリート橋梁史におけるエヌビック社の再評価を試み、次のような点を明らかにした。新技術の導入に慎重な当時のフランスでは、主として信頼性や美観といった理由から鉄筋コンクリート橋の日常的な利用は極めて困難な状況であり、橋梁建設の主流は依然として石造アーチ橋や鉄橋であった。鉄筋コンクリート橋の普及を目的とするエヌビック社は、(1)T桁構造による「部材上のシステム」、(2)T桁構造に全固定構造と装飾を加えた「設計上のシステム」によって、構造上、美観上の問題を克服した。さらに(3)技術移転と情報戦略による「経営上のシステム」を構築することで、鉄筋コンクリート橋を実験レベルから日常レベルへと発展させることに成功した。こうして新技術の定着に成功した同社の橋梁建設は、構造や造形の洗練がおこなわれる今日的な鉄筋コンクリート橋の時代を準備することに貢献したと言える。
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