2005 Fiscal Year Annual Research Report
結晶場制御による量子カッティングの動的挙動の解明と光子カスケードレーザー発振
Project/Area Number |
16656198
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
小玉 展宏 秋田大学, 工学資源学部, 教授 (90282152)
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Keywords | 真空紫外分光 / スピン許容と禁制 / ワイドギャップ材料 / 量子カッティング / ダウンコンバージョン / エネルギー移動 / カスケード発光 / 希土類イオン |
Research Abstract |
本研究では、Gdベース新規フッ化物、ケイ酸塩結晶の希土類イオンのスピン結晶場制御という概念に基づく希土類イオン間の2ステップエネルギー移動のダウンコンバージョンによる量子カッティングの発現とその動的挙動の解明、および2光子発光遷移のカスケード(段階遷移)誘導放出を利用した可視レーザー発振可能性に関する基礎的知見を得ることを目的とし、下記の成果を得た。 1.2種あるいは3種のLn(I)^<3+>-Gd^<3+>-Ln(II)^<3+>(Ln^<3+>=Eu^<3+>,Er^<3+>,Tb^<3+>,Pr^<3+>)希土類イオン系で、スピン状態を含む結晶場で、交差緩和と格子間共鳴エネルギー移動を経る2ステップのダウンコンバージョンによる量子カッティングを調べるために、新規なワイドギャップフッ化物KLiGdF_5:Eu^<3+>,K_3GdF^<10>:Eu^<3+>,CsGd_2F_7:Er^<3+>,Tb^<3+>、ケイ酸塩SrY_4(SiO_4)_3O:Pr^<3+>結晶を合成した。その結果、2種のイオン対をもつKLiGdF_5:Eu^<3+>,K_3GdF_<10>、Eu^<3+>では、4f-4fの真空紫外励起で最大140〜165%の交差緩和効率をもつ量子カッティング発現を見出すとともに、量子カッティング効率のEu^<3+>濃度依存を明らかにした。また、量子カッティング過程では、最近接希土類イオン数に基づき、励起Gd^<3+>から第3〜4近接Eu^<3+>までエネルギー移動することを明らかにした。 3種のイオン組み合せのCsGd_2F_7:Er^<3+>,Tb^<3+>では、Er^<3+>,Tb^<3+>の真空紫外域の4f^<n-1>5d^1のスピン許容と禁制の励起準位を解明し、Er^<3+>の4f^<11>-4f^<10>5d^1スピン許容準位への真空紫外励起による最大120%のダウンコンバージョン効率をもつ量子カッティング発現を見出すとともに、そのEr^<3+>とTb^<3+>の濃度比依存を明らかにした。ケイ酸塩SrY_4(SiO_4)_3O:Pr^<3+>では、量子カッティングは見出されなかったが、低温で、4f^2-4f^2励起で、2準位系の永続光ホールバーニング現象の発現を新たに見出した。 2.量子カッティングの動的挙動の解明のため、KLiGdF_5:Eu^<3+>,K_3GdF^<10>:Eu^<3+>おいて、真空紫外の4f-4f励起および近紫外4f-4f励起の時間分解蛍光スペクトルおよび寿命測定より求めた、発光の立ち上がりと減衰から、交差緩和および格子間の共鳴エネルギー移動の時間挙動を明らかにし、量子カッティング過程が、真空紫外励起後、Eu^<3+>-Gd^<3+>の交換相互作用による交差緩和Gd^<3+>-Gd^<3+>の副格子間の共鳴エネルギー移動の2ステップエネルギー移動過程で起こることを実証した。 これらの結果から、Eu^<3+>の4f-4f励起での量子カッティングによるカスケード放出過程に対する基礎的な知見を得るとともに、カスケードレーザー発振の原理的な可能性を見出した。
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Research Products
(2 results)