2004 Fiscal Year Annual Research Report
ナノドメインエンジニアリングによる環境適合型巨大圧電材料の創製
Project/Area Number |
16656201
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
和田 智志 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (60240545)
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Keywords | チタン酸バリウム / 単結晶 / ナノドメインエンジニアリング / 非鉛系圧電材料 / エンジニアード・ドメイン / 圧電特性 / フォトリソグラフィー / パターニング電極 |
Research Abstract |
[111]方位にカットしたチタン酸バリウム単結晶に、エンジニアード・ドメイン構造を導入し、更にそのドメインサイズを制御することで圧電特性の更なる向上を目指すことを目的とした。まず、これまで行ってきた温度、印加電場を制御することでどこまで細かいエンジニアード・ドメイン構造を導入できるかについて検討を行った。その結果、キュリー温度である132℃以上である133℃で電場を[111]方向に印加することで、常誘電体から強誘電体への電解誘起強誘電相転移を起こすことで、ドメインの核生成、核成長プロセスを引き起こすことができることを見いだした。そこで、これらの条件の最適化を検討した結果、最小で5.5μmのドメインサイズの導入ができることがわかった。そこで、圧電特性を代表する33振動子、31振動子を作製し、確立した最適条件で分極処理を行うことにより、100μmから5.5μmまで様々なドメインサイズを持つチタン酸バリウム単結晶振動子を作製した。これらの圧電特性を、共振・反共振法を用いて測定した結果、ドメインサイズの減少に伴い、圧電定数、比誘電率、電気機械結合係数、弾性コンプライアンスが単調に増加する現象を見いだした。このことからドメイン壁自体が高い圧電特性を持つことを確認できた。実際に、ドメイン壁が存在しないシングルドメイン構造では圧電d_<31>定数は-62pC/N、一方圧電d_<33>定数は224pC/Nとなる。しかし、同じ分極方位を持ちながら、ドメインサイズが5.5μmの試料においては、圧電d_<31>定数は-230pC/N、一方圧電d_<33>定数は330pC/Nとなった。従って、振動モードによっては、4倍近い圧電特性の向上が観察された。実際、ドメインサイズと圧電定数との関係をプロットし、その関係を検討した結果、ドメインサイズを1μmまで小さくしてやると、圧電-d_<31>定数、圧電d_<33>定数ともに、1000pC/Nまで向上することが明らかとなった。そこで、5,5μmよりも更に小さなドメイン構造を導入するために、フォトリソグラフィー技術を用いて、チタン酸バリウム単結晶上に種々のサイズを持つパターニング電極を描画した。このために、200℃以上の高温に耐えられる樹脂を用いて紫外線を照射し、パターンを形成する。その後、樹脂で作ったパターン上に直接金電極をスパッタすることで、パターニング電極を作製した。しかしながら、今回は最低で3μmのパターニング電極までしか作製できなかった。そこでこの電極を用い、温度、電場依存性について詳細な検討を行った結果、高圧側ではパターン通りのドメインが導入されることが明らかとなった。しかしながら、グランド側では粗いドメインサイズとなり、電圧印加方向にドメインサイズが変化する構造しか得られなかった。原因は印加電場が足りないことになることがわかっており、その対策を行っている。しかし、この試料でも圧電d_<31>定数は-400pC/N近い高い値をだし、パターニング電極が有効であることを示した。
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