2004 Fiscal Year Annual Research Report
結晶方位制御による船舶用耐食アルミニウム合金開発の基礎研究
Project/Area Number |
16656274
|
Research Institution | National Maritime Research Institute |
Principal Investigator |
村上 健児 独立行政法人海上技術安全研究所, 輸送高度化研究領域, グループ長 (60112067)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千田 哲也 独立行政法人海上技術安全研究所, 企画部, 研究統括主幹 (80344240)
植松 進 独立行政法人海上技術安全研究所, 輸送高度化研究領域, 上席研究員 (10344235)
高橋 千織 独立行政法人海上技術安全研究所, 輸送高度化研究領域, 主任研究員
|
Keywords | 6000系アルミニウム合金 / 耐食性 / 押出加工性 / 結晶粒界 / 析出物 / 熱処理 / 結晶方位 / 船舶用 |
Research Abstract |
アルミニウム合金は軽量であることから、耐食性のある5000系合金が高速船艇などで使われている。一方,6000系合金は5000系合金に比べて押出加工性がよく、また熱処理による強化が可能であるが、結晶粒界が選択的に腐食される粒界腐食が発生しやすいために、船舶への用途が制限されている。これらのことから、形材への加工が容易で耐食性に優れた高強度アルミニウム合金の開発が望まれている。 結晶粒界の特性は隣接する結晶粒の方位関係に依存する。そこで6000系アルミニウム合金の基本組成を元とした合金を作り、隣接結晶粒間の方位関係と粒界組織および粒界腐食の関係を微視的に調べる。これらの結果をもとに、高強度で耐食性と加工性に優れたアルミニウム合金を開発するための手法を示すことを研究の目的とする。平成16年度は、基本組成合金を作り、その組織を特に結晶粒界に着目して調べた。 純アルミニウム、アルミニウム-銅、アルミニウム-マグネシウムおよびアルミニウム-シリコン母合金から、6000系アルミニウム合金の基本組成であるアルミニウム-マグネシウム-シリコン合金およびアルミニウム-マグネシウム-シリコン-銅合金を溶製した。鋳造方法を変えることによって、柱状晶組織を持つ鋳塊と等軸晶組織を持つ鋳塊を得た。これらの合金を803Kで4.2ks間熱処理して焼き入れ(溶体化処理)、続いて448Kで28.2ks間時効処理した。これらの試料の組織を透過電子顕微鏡と走査電子顕微鏡で調べた。 アルミニウム合金鋳塊は直径約35mm、高さ約150mmであり、柱状晶鋳塊は全長にわたって柱状晶から成り、等軸晶鋳塊は上部の10mm〜15mmを除いて直径約0.2mmの微細な等軸晶から成る。後者が等軸晶であることをエッチピット法で確認した。溶体化処理後に時効処理した試料には、金属間化合物の析出物が存在する結晶粒界と存在しない結晶粒界とがあることを明らかにした。結晶粒界での析出は粒界腐食と密接に関係しており、析出が起こらない粒界があることは、このような粒界を人為的に形成させることによって耐食性に優れたアルミニウム合金を作ることができることを示す。等軸晶組織を持つ試料には微細な気孔が存在するが、これは鋳造法の改良によって減らすことができ、さらに押出加工で消滅させることができる。
|