Research Abstract |
生物が生息できる環境は限られており,一般には「生物圏」は,地上およびその近傍(空中と土壌)と考えられていたが,おり,微生物は好気性,嫌気性,耐酸性,耐アルカリ性,耐熱性,耐圧性などきわめて多様性に富んでいることから,地下(岩石内)にも微生物が生息する可能性が指摘されており,「生物圏」が「岩石圏」にも拡張されるようになってきた. 岩石内の酸化・還元環境を決めるのは,無機反応,特に遷移金属と水との相互作用により,その系の酸化・還元環境が決定されると考えられてきた.すなわち,地下はフリーの酸素に極めて乏しい還元環境であり,これを制御しているのは無機反応と考えてきた.もし生物が岩石の中で生息でき,持続的な代謝活動を行うことができれば,生物が関与する酸化・還元反応が岩石の酸化・還元環境大きな影響を及ぼしていることが推測される.上記の予測を明確にするためには,岩石内で生物が生息・代謝できるか,そしてそれを正確に検知できるか,この基本的技術の確立する必要がある. 岩石中の微生物反応を明らかにするには,外的要因による汚染や,試料作成段階での微生物の侵入,付着等の汚染を極力抑える必要がある.岩石内には微量ではあるが流体としての水が存在する.この水は岩石の割れ目に浸入し,のちに割れ目が閉じて一種の流体が岩石中に包含され,一般に流体包有物といわれる.岩石中で微生物が生息する,もしくは生息したとすれば,この流体包有物の中がもっとも有望であろう.岩石中から流体を抽出し,その中の生物痕を探索するための試料の選定,加工方法の検討,滅菌の方法,遺伝子検索の方法,代謝活動の確認の方法について検討を行った. この結果,紫外線による表面滅菌でも十分な滅菌効果があることが明らかになった.今後は他の滅菌方法との比較,および岩石加工用の実験器具の簡便な滅菌方法を検討する.
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