2004 Fiscal Year Annual Research Report
土壌環境、土壌微生物群集機能、植物生理の相互動態に基づく生態系資源獲得構造論
Project/Area Number |
16657007
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
舟川 晋也 京都大学, 農学研究科, 助教授 (20244577)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢内 純太 京都大学, 地球環境学堂, 助手 (00273491)
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Keywords | セルロース分解活性 / 微生物バイオマス及び活性 / 森林土壌 / pH / 土壌有機物動態記述モデル / 分解速度定数 |
Research Abstract |
土壌の性質の違いが微生物の活動をどのように制限あるいは助長するか調べるため、異なる気候条件下の森林・耕地土壌を用いて、セルロース分解活性の推移を追跡した。その結果、微生物バイオマスは土壌有機物量によって一元的に決まるが、セルロース分解速度は微生物の活性によって決まり、その活性は地温とpHによって規定されている事がわかった。また、森林は土壌有機物量も多く微生物バイオマスも多いが、比較的低い地温とpHのために活性が抑制され、分解速度は小さくなり、高い土壌有機物量を維持する系になっていると考えられる。一方耕地は、土壌有機物量も微生物バイオマスも少ないが、比較的高い地温とpHのために活性は抑制されず分解速度が大きくなり、有機物を消費する系になっていると考えられる。以上を踏まえ、特殊な場合を除いてセルロース分解は土壌呼吸による有機物分解を代表しており、セルロース分解速度から土壌呼吸速度-現地で実測されるもの-を推定できる事がわかった。 これまで土壌有機物の動態を記述するモデルは数多く考案されているが、多くは一定の分解率を持つと仮定されたいくつかの土壌有機物プールの増減を予測する構造となっている。本研究の結果からはむしろ逆のアプローチ、すなわち測定可能な有機物プールの分解速度の規定要因を模索することが有効であることが示された。このようなアプローチは、これまで著名なモデルの有効性が森林あるいは草地・耕地に限定されがちだった欠点を克服しうる可能性を持つと考えられる。また本課題で目標とする土壌/微生物/植物間の相互関係を記述する際にも、動的な要素-この場合有機物プールよりその分解速度定数-を変数として考察する手法が有効であると思われる。今後、ここで有効性が示されたセルローステストを併用しながら、植物を加えたミクロ模擬生態系における物質動態を調べていく予定である。
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Research Products
(4 results)