2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16657008
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西田 隆義 京都大学, 農学研究科, 助手 (60208189)
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Keywords | 捕食回避 / 自切 / 非致死的効果 / 捕食-被食系 / バッタ / 鳥 / 休耕田 / 里山 |
Research Abstract |
休耕田に生息するバッタ群集(コバネイナゴ、トゲヒシバッタ等)の自切に対する捕食者の効果を、ウズラ、トノサマガエル、キクズキコモリグモ、およびチョウセンカマキリを用いて実験的に検討した。自切を引き起こしたのはほぼウズラに限られた。ウズラは、飲み込みに不適なバッタ類の後脚をつつくがこのとき、後脚の結節部を嘴で強く挟むことにより、自切が特異的に引き起こされることが分かった。さらに休耕田に生息する野鳥類を用いて、どの鳥種が自切を引き起こしうるかを検討した。その結果、純植物食の鳥(ハトなど)と大型の鳥(ハシボソガラス等)を除く、小型〜中型の鳥が自切を引き起こす潜在的能力を持っていることが分かった。野外調査の結果、これらの鳥種の内、コバネイナゴの成虫期(9-11月)に同所的に出現し、かつ休耕田で採餌するのは、ホオジロとセグロセキレイの2種であった。自切率に関する理論的な解析を行ったところ、野外で現実に観察される10〜20%の自切率を引き起こし、かつコバネイナゴの高い生存率(日当たりで約0.987)を実現させうるのは、致死率が低く、かつ自切誘起率が低い鳥に限定されることが分かった。この結果は、ホオジロとセグロセキレイがコバネイナゴの自切の主犯であるとする室内実験と野外観察からの推論を強く支持した。自切の適応度コストを測定するために、野外網室においてまず自切の生理的コストを生存率によって評価した。その結果、自切は生存率に影響しないことが分かった。自切はいわば予期される怪我であり、その生理的コストを最小化するような適応が存在することが示唆された。
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