2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16657023
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松島 俊也 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助教授 (40190459)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 浩志 信州大学, 教育学部, 教授 (60135118)
|
Keywords | 行動 / 生態 / 脳 / 認知 / 採餌行動 / 自動計測 / 衝動性 / 社会性 |
Research Abstract |
従来の研究から、鳥類の大脳線条体は餌に到達するまでに要する時空間的投資量の予期値を符号化することが判明している。他方、大脳の概則に位置する弓外套(哺乳類の大脳皮質の一部に相似と考えられる)は、餌に達した後の採餌に要する時間的投資量を予期することに与ることが判明している。このように、脳は外界の餌の生態学的現実を正しく表象するよう、進化を遂げてきたと考えることができる。 本研究の目的は、第三の因子として餌の出現確率に着目した。ある餌は大きいが稀である。他方、ある餌は小さいが高い確率で獲得できる。量と確率の積(餌の期待値)が同じであっても、これらの2者のいずれを選び取るか、これは動物の生態学的背景によって決まる。認知過程に加わる生態学的淘汰圧を同定するために、カケスの貯食行動に着目した。 本年度は初年度として、(1)観察に適したカケスの個体群とフィールドを見つけること、(2)給餌しながら行動を直接に自動計測するロボット装置を開発すること、を行なった。秋季から冬季にかけて(9月〜12月)定期的に(毎週約2回)、愛知県設楽郡稲武町の名古屋大学演習林(標高約1000m)および名古屋市名東区牧野ヶ池緑地公園を調査した。その結果、演習林の高トッケ地区およびその南方の山地に、カケスの生息を確認した。11月以後、カケスのかなりの個体数が減少し、同時に緑地公園内の個体数が急増した。かなり広い範囲を移動するものと考えられる。この間、社会構造がどのように変化するか、を明らかにすることが今後の課題である。 さらに、給餌しながらカケスの行動を計測するロボットの開発にあたった。ICタグを装着することによって個体識別を行い、その行動をビデオ画像・音声・オペラント反応などの形で観察記録すると共に、個々の個体に対して異なる給餌プログラムを実施しうる装置を開発した。しかし、大きな問題がみつかった。装置が大きくなったためカケスの警戒を呼び、カケスは装置に近づかない。装置を小さくすると共に、人為的な装置を無理なく生態環境に持ち込む手続きの開発が、今後の課題である。
|