2004 Fiscal Year Annual Research Report
生化学的分析によってミイラからどのような情報が抽出できるのか
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16657072
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
篠田 謙一 国立科学博物館, 人類研究部, 室長 (30131923)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴田 康行 国立環境研究所, 化学環境研究領域, 領域長 (80154251)
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Keywords | 古代アンデス / パラカス・ナスカ文化 / ミイラ / DNA分析 / 安定同位体 / 食性分析 / 年代測定 |
Research Abstract |
本年度はペルーリマの国立考古学人類学歴史学博物館に所蔵されているミイラからのサンプルを採取した。博物館には1920年代から30年代にかけて、ペルー人考古学者フリオ・テーヨによって収集されたパラカスおよびナスカ地方からミイラが約千体収蔵されている。今回はこれらのミイラをサンプル採取の対象としたが、多くはファルドと呼ばれる大きな布に包まれているので外見からは保存状態を確認できなかった。そこで、状態の確認のために80体あまりのミイラのレントゲン撮影を実行した。その結果、多くのミイラは数十年に渡る博物館での保管期間のうちに、軟部組織の大部分が破壊されてしまっており、解析には適さないことが明らかとなった。そこレントゲン写真から特に状態の良いと判断された数体に関して、更にCTスキャンによる検査を行って状態の確認をした。こうして選んだファルドの開梱作業を実行し、最終的には5体のミイラからサンプルを採取した。DNA分析および年代測地用のサンプルとして各個体から硬組織と軟部組織各1g程度を採取した。また、安定同位体による食性分析用のサンプルとして、毛髪・皮膚・筋肉・消化管の一部各0.5g程度を採取した。これは、それぞれ形成時期の異なる器官を分析することで、生涯にわたる食性の変化があったかどうかを検証するためである。更に、ミイラ本体を包むファルドが後の時代に更に追加されたのではないかという考古学者の仮説を検証するためにパラカスのミイラからは、遺体を包んでいたファルドの繊維も同時に採取した。合計で21点の分析用サンプルはペルー考古学委員会の正式な許可を得て日本に輸出した。サンプルは2月末に日本に到着し、現在、DNA分析および炭素14を用いた年代測定、食性分析を行っている。
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