2004 Fiscal Year Annual Research Report
葯におけるミトコンドリア機能の阻害誘導-雄性不稔の機序解明に向けて
Project/Area Number |
16658002
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
三上 哲夫 北海道大学, 大学院・農学研究科, 教授 (50133715)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 友彦 北海道大学, 大学院・農学研究科, 講師 (40261333)
小野寺 康之 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助手 (80374619)
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Keywords | テンサイ / ピルビン酸脱水素酵素複合体 / PDH E1αサプユニット / 雄性不稔 / アンチセンス / TA29 / 形質転換 |
Research Abstract |
今年度は、アンチセンス法を用いて、葯壁タペート細胞のミトコンドリアの機能を妨げ、花粉不稔を誘導した。得られた研究成果は次の通りである。 [1]アンチセンスRNAによる発現阻害の標的として、テンサイのミトコンドリアピルビン酸脱水素酵素複合体(PDH)を選んだ。先ず、PDH E1αサブユニット遺伝子の塩基配列を決めた。この配列をアンチセンス方向で、タペート細胞特異的プロモーターTA29制御下に配置し、タバコへ導入した。 [2]7個体の形質転換タバコを得た。4個体は正常稔性を示したが、残り3個体は花粉不稔を起こしており、稔性はそれぞれ15%、47%、65%であった。 [3]これらの雄性不稔タバコにおいては花糸も短くなる傾向にあり、SEM観察によれば花糸先端部で細胞の短縮が特に著しい。 [4]雄性不稔タバコに非形質転換体の正常花粉を交配したところ、種子が稔った。この種子を発芽させ、温室内で開花させた結果、雄性不稔の子孫と雄性可稔の子孫が1:1の比率で生じた。また雄性不稔タバコは例外なしにアンチセンス遺伝子をもち、雄性可稔タバコはアンチセンス遺伝子をもたないことがわかった。 [5]アンチセンス遺伝子の発現している雄性不稔タバコにおいては、タバコ内在性PDH E1αサブユニット遺伝子の発現が著しく抑制されている。従ってPDH E1αのアンチセンス配列導入によって内在性PDH E1αの発現が妨げられ、その結果花粉不稔がもたらされたと結論した。 [6]電子顕微鏡を用いて葯のタペート細胞の微細構造を調査した。雄性不稔タバコにおいては、花粉四分子期以降にorbicule, elaioplast, tapetosomeの形成が阻害され、また小胞子外壁の発達も貧弱であることがわかった。
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