2004 Fiscal Year Annual Research Report
農業用水路における流下種子の実態解明と植生復元への応用可能性の検討
Project/Area Number |
16658013
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 和弘 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (60242161)
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Keywords | 種子 / 流下 / 谷津 / 農業用水路 / 発生実生法 / 散布 / 堆積物 |
Research Abstract |
栃木県市貝町北部にて、伝統的な管理形態の流路が谷の源頭から長い延長にわたって維持されており、かつ谷津内の土地利用が伝統的な形態であること、近日中の耕地整理等が予定されていないことなどを条件として調査対象の谷津を検討した結果、同町文谷地区にある谷津を初年度の調査対象とすることとした。この谷津の源頭部にはハンノキやヤナギ類が侵入しつつある湿生草地が形成されており、そこに生育する植物種の一部は湿地の下流側には生育が認められなかったことから、流下種子の散布経路としての農業用水路の役割を検討する上で適当な条件を備えていると判断された。2004年9月に、谷戸内の6箇所で流路底堆積物を採取して播きだしたところ、採取地点の周囲の現存植生には生育が認められなかった種を含む多様な草本植物の発芽が多数認められ、水路が種子の散布経路として機能している可能性が確認された。発生実生数は、河川水辺の堆積物から同様の方法により発生する実生の数と比べても多い傾向があった。2005年2月に同じ谷戸で、右岸水路沿い18地点、左岸水路沿い19地点、流入する支流7本の合流点付近計8地点より、水路底の堆積物を採取した。1地点は概ね水田1枚の上下流方向の幅の1/2(最大で約10m)を範囲とするようにし、範囲内で流れが速い場所と遅い場所を1箇所ずつ選んで採取を行った。全体を通じて堆積物の粒径は比較的粗く、砂質堆積物が優占していたが、地点によってはより細かな粒径のシルト質、粘土質の堆積物が認められたところもあった。また、リターの堆積状況にも空間的な不均一性が認められた。水路底の堆積物のほか、水路沿いの水田、休耕田、畦、刈跡、林縁等からも土壌サンプルを得た。現在は、これらの散布鵜について発芽試験を行っている段階である。
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