2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16658014
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井上 真理 九州大学, 大学院・農学研究院, 教授 (60091394)
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Keywords | 種子 / 結合水 / NMR緩和時間 / 乾燥耐性 / 自由水 / 穂発芽 / コムギ / ワイルドライス |
Research Abstract |
生体の水の物性は、NMRの原理を応用し、水素原子核の動きを観測することにより得られる。医学臨床面でのNMRの応用は目覚ましいが、植物での研究例は限られており、特に種子に閉じこめられた水の物性は全く知られていない。登熟した種子に存在する10%ほどの水はガラス化した水として、長期間の乾燥に耐える結合水の性質を持ち、これは生命を維持する種子の特殊な保水能としてとらえることができる。 ^1H-NMR緩和時間により得られる自由水と結合水の変化について、前年度の実験結果をもとに、サツマイモ塊根(J.Agron.Crop Sci.)、エンドウ胚軸(J.Fac.Agr.Kyushu Univ.)、牧草の葉身や根(Plant Pro.Sci.)における温度ストレス応答を報告した(2004年)。さらに、これらの作物を含む様々な植物の器官の水の分子動態の変化について総説を著した(Environ.Cont.Biol.,2004) この知見と技術をもとに、種子に存在する水の物性について、少量の降雨により収穫期に穂中で発芽する「穂発芽」問題を解明するための研究を行った。その結果、穂発芽特性の高いコムギ品種ほどABAに対してNMR緩和時間が有意に短縮されることが示された(Cryobiol.Cryotechnol,2004)。種子はABAの蓄積により乾燥耐性をもつが、種子の水の機能は未知の部分が多く、NMRによる観測が種子の水の動態を知るのに有効であることを明らかにした。さらに今年度は、乾燥耐性をもたない作物種子として、ワイルドライスの種子を材料として実験を行い、種子の水の特性について最終年度に向けて執筆中である。
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