2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16658024
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田中 利治 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (30227152)
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Keywords | 細胞・組織 / 生理活性 / ウイルス / 卵巣液 / 毒液 |
Research Abstract |
寄主であるウワバにNosemaが感染していることがわかり、かなり排除することに時間がとられ実験のすすみ度合いが悪かったが、最近ほとんど排除したNosema free系統を確立できた。表皮細胞に刺激を与えて特異的な肥厚を引き起こす因子は、寄生バチが寄生するときに注入する卵やポリドナウイルス、毒液などが考えられる。そこで人工的にポリドナウイルスや毒液の注入を行い、こぶの形成度合いを観察した。ところがいずれもこぶ形成の引き金にはなっていないことが明らかになった。今までの内部寄生バチに関する研究では、ポリドナウイルスや毒液が寄主に様々な生理的変化を引き起こす要因であったことから、これは予想外であった。そこで卵巣の輸卵管の中で卵とともに存在する卵巣液に注目した。卵巣液の注入を行ったところ寄生と同様の確率でこぶ形成がみられ、卵巣液にこぶを形成させる要因が含まれていることがわかった。熱変成した卵巣液ではこぶの形成が起こらないことから、卵巣液を構成するタンパク質にこぶ形成誘導因子が存在するど考えられる。これはEwen & Arthurの報告(1976)結果がこぶを誘導する物質は、毒液であるという結論と全く違っている。彼らの使った寄生バチの種類が違うことで、こぶを形成させる要因が毒液から卵巣液に変わっている可能性が考えられるが、正確なことは彼らと同じ種を日本で見つけるしかない。ハチから毒液をとるときに注意をおこたると卵巣液のコンタミンが容易に起こることも考えられる。今後はこのタンパクを分画し、表皮細胞の特異部位に刺激を与え肥厚させる原因を明らかにしていく。さらにシート上にできる培養細胞系の確立によってin vitroで解析ができるようにする。また、表皮細胞の反応を見るために細胞表面の糖鎖解析を様々なレクチンを購入し共焦点レーザーをもちいて行った。現在細胞間接着の変化を時間軸を中心に検討している。 こぶによる異物排除と体内の細胞性防御反応との関連性を明らかにするために、生体異物(ハチの触覚)を注入し、その反応とこぶ形成による異物排除との関連性をさらに調べた。その結果、細胞性防御反応により包囲化されてしまう物質はこぶによる排除を受けず、こぶ内に入りこぶから排除されるのは寄生バチの卵のような包囲下を逃れている物質であることがわかった。
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