2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16658063
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
寺田 珠実 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (70201647)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鴨田 重裕 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 講師 (80282565)
|
Keywords | 樹木 / 分化 / 脱分化 / 細胞周期 / 細胞培養実験系 / 発根 / 分化特異的因子 |
Research Abstract |
本研究は、樹木細胞の分化機構とくに発根機構の解明をめざすものだが、今年度はまず、増殖制御の現象にかかわる安定したモデル細胞培養実験系を構築することを目的とした。材料も針葉樹(イチョウを含めた裸子植物)に絞り、トウヒ類とイチョウを用いた。トウヒ属のエゾマツ、アカエゾマツは倒木更新によって世代交代を行う北海道の主要樹木である。最初に原植物を大量に得る方法を模索するために、人工的な培養条件(培地、培養環境、培養支持体)の検討を行ったところ、底面積27cm^2×高さ12cmの培養器に、支持体としてフロリアライト222(日清紡)を8cm^3×4個、培養液として通常の1/2濃度のLinsmaier & Skoog無機塩類培地あるいは水を加え、蒔種した場合に室温、600luxの蛍光灯下、エゾマツで約80%、アカエゾマツで約40%の発芽率を得た。実生の胚軸と幼葉からは、それぞれ5mg/Lという高濃度のオーキシン、サイトカイニンを組み合わせた培地を用いることによって、脱分化した細胞を得ることに成功した。今後、分化細胞と脱分化(カルス化)細胞について、ディファレンシャルディスプレイ法などを用い、分化機構に関連した遺伝子情報を獲得することが可能となる。さらに胚軸から発根させるため、薬剤添加条件を検討中である。イチョウについては、すでに脱分化培養系は確立しているが、再分化には至らなかった。イチョウ培養細胞に細胞周期阻害試薬のアフィディコリンを加えると不鮮明ながらもDNAの断片化や核の凝縮などいわゆるアポトーシスに類似した現象を伴った細胞死が誘導される事がわかった。このような細胞培養実験系を利用して分化特異的因子を探索中である。細胞周期関連試薬の添加条件を検討すると様々な増殖制御実験系を作製することができると考えられ、発根誘導への応用が期待される。
|