2004 Fiscal Year Annual Research Report
サクラ自家不和合遺伝子の多様性-遺伝子の機能、変異、進化をつなぐ分子生態学的解析
Project/Area Number |
16658064
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
向井 讓 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (80283349)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津村 義彦 森林総合研究所, 森林遺伝研究領域, 研究職(ゲノム解析研究室長)
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Keywords | 自家不和合性 / サクラ / S-RNase / 分子進化 / 遺伝的構造 |
Research Abstract |
サクラ局所個体群におけるS-RNase対立遺伝子の保有状況 局所個体群が保有するS対立遺伝子数、頻度、空間分布を調べるため、富士山麓(フジザクラ)および八丈島(オオシマザクラ)の試験地内の全個体をマーキングし、樹木位置を測量し、DNA分析用の葉を採集した。また、試験地内の成熟個体(3〜6個体)から液果を採種し、実生育成をおこなっている。DNA分析の結果、フジザクラの個体群ではS対立遺伝子の片方を共有する個体が空間的にも近い位置に存在していることが認められた。また、S対立遺伝子の両方を共有する個体の組み合わせも複数存在し、これらの大部分がS遺伝子以外の遺伝マーカーについても共通であったため栄養繁殖で生じたものであると推察された。自然受粉種子の解析については、八丈島の個体群についてのみ終了しており、母樹当たり平均5個体以上の花粉親が種子形成に関与していること、母樹と花粉親との空間的距離は比較的近く大部分の花粉親が母樹から40m以内に存在していた。 サクラS-RNaseの塩基配列の多様性 フジザクラからクローニングした37個のS対立遺伝子の塩基配列を決定し、解析をおこなった。その結果、RNase活性部位のヒスチジンやジスルホシル結合を構成するシステインの部分では同義置換、非同義置換共にきわめて小さく、強い機能的制約が働いていることを反映していた。また、非同義置換が同義置換を上回る領域が4ヶ所存在し、自己-非自己の認識に作用している領域であると想像された。次に、全ての対立遺伝子の組み合わせについて非同義置換と同義置換を計算したところ、同義置換の平均は0.172、非同義置換の平均は0.109であった。この値をPrunus属栽培品種(サクランボ、アーモンド)と比較すると、非同義置換についてはほぼ等しいが、同義置換の値が少さく、局所個体群に作用した遺伝的浮動を反映すると推察された。
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