2006 Fiscal Year Annual Research Report
樹木を直接海へ-森と海の生態系連環機構解明のための基礎研究-
Project/Area Number |
16658080
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 克 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 教授 (20155170)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 洋 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 教授 (60346038)
徳地 直子 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助教授 (60237071)
益田 玲爾 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助教授 (60324662)
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Keywords | 間伐材魚礁 / スギ / 広葉樹 / 間伐 / 魚類 / 蝟集 / 付着生物 |
Research Abstract |
京都大学フィールド科学教育研究センター芦生研究林より切り出したスギ製、広葉樹(7種)製および対照区として塩化ビニール製の魚礁を各3基製作し、平成16年5月に水深7〜8mの海底へ設置した。3年間にわたり毎月2回の潜水観察調査を行い、3年間で合計58種、20633個体の魚類の魚礁への蝟集を確認した。魚種数、個体数ともに、1年目はスギ魚礁>広葉樹魚礁>塩化ビニールパイプ魚礁の傾向が明瞭であったが、2年目には3魚礁区間での差が小さくなった。3年目となる平成18年度の調査では、魚種数、個体数ともに差は小さくなったものの、木製魚礁>塩化ビニールパイプ魚礁となった。しかし、スギと広葉樹間では差は認められなかった。潜水観察によって明らかとなった集魚における魚礁間の差とその経時変化のメカニズムを調べるために、いくつかの視点から研究を行った。潜水観察と並行して実施した魚礁周辺でのプランクトン採集では、採集された動物プランクトンの組成、量ともに魚礁間で違いは認められなかった。このことから、魚礁材から溶出する化学物質による動物プランクトンの誘因や生産力への影響は否定された。また、スギ、ヒノキ、広葉樹、人工海藻、塩ビなど7種の異なる素材を入れたかご網を設置したが、採集された魚種の組成、量ともに素材間で差はなく、素材そのものの違いが魚類の誘因に影響するのではないと判断された。魚礁近くに設置したテストピースへの付着生物量はスギ>広葉樹となり、スギ材は穿孔性生物の穿孔により広葉樹よりも早い速度で分解された。以上の結果から、素材の柔らかいスギ材には付着・穿孔生物が付きやすく、それを摂餌したり空隙を住み家とする小型生物を狙ってメバルやマアジなどが蝟集するメカニズムが示唆された。また、2年目以降は材間の生物の付着・穿孔に徐々に差が無くなり、魚類の蝟集効果においても差が認められなくなることが推察された。
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